「たとえ目が痛くても、コンタクトレンズなしでは過ごせない」という方は多いでしょう。しかし、目に傷が付いているときにコンタクトレンズを使用するのはとても危険です。また、自己判断で目薬などを使うのも避けなければいけません。
それでは、目に傷が付いたときはどうすれば良いのでしょうか。
今回は、目に傷が付くおもな原因や自覚症状とともに、目に傷が付いたときの対処法を解説します。
「目に傷が付いたら、痛いのが当たり前」と思うかもしれませんが、必ずしもそうではありません。
目に傷が付くと、痛み以外にも以下のような症状があらわれることがあります。
目の充血
疲れ目
かすみ目
目の乾き
目のしょぼつき
目のゴロゴロ感 など
ごく小さな傷の場合、痛みなどの自覚症状がほとんどないこともあります。
しかし、「自覚症状がない」ことと「異常がないこと」は必ずしもイコールではありません。ごく小さな傷でも、放置すると目に重大なトラブルを招くこともあります。したがって、定期的に眼科を受診して目の健康状態をチェックしてもらうことが重要です。
それでは、どのような場合に目に傷が付きやすいのでしょうか。おもな原因を見ていきましょう。
目に砂やほこりなどが入ったり、まつ毛が刺さったり、目や目の周りにボールなどが当たったりすると、目に傷が付くことがあります。その他、掃除中に使った洗剤、ヘアカラー剤などの化学製品、シャープペンシルの芯の欠片など、日頃何気なく使っているものが目に入って傷の原因になるケースも少なくありません。
また、強い紫外線を長時間浴びることで目に傷が付くこともあります。よく知られているのが、スキー場などへ行った際に雪面から反射する紫外線で生じる雪眼炎(せつがんえん:別名「雪目(ゆきめ)」)です。雪眼炎は、海岸や高い山で強い紫外線を長時間浴びたときにも起きることがあります。
コンタクトレンズの不適切な使用が原因で、目に傷が付くこともあります。
例えば、コンタクトレンズが汚れているとレンズの滑りが悪くなるため、目に傷が付きやすくなります。また、使用期限が過ぎたレンズや変形・破損したレンズを装用するのも目に傷が付く原因となるため、避けなければなりません。特に、ソフトコンタクトレンズは乾燥すると変形しやすいため、保管時には保存液にしっかり浸す必要があります。
そして、目に合わないコンタクトレンズを使うのも、目に傷が付く原因の一つです。BC(ベースカーブ:レンズの曲がり具合を表す数値)が大きいレンズを使うと、レンズのズレや張り付きが起こり、目に傷が付きやすくなります。また、BCが小さすぎるレンズを使っても、レンズによる摩擦が強くなるため、やはり目に傷が付きやすくなります。
ドライアイが原因で、目に傷が付くこともあります。
ドライアイは、涙の量が少なくなったり涙の質が低下したりして、目の表面に涙が均等に行きわたらなくなる病気です。涙には目を守る働きがあるため、ドライアイになると目に傷が付きやすくなります。
ドライアイの原因はいろいろありますが、コンタクトレンズの装用がドライアイを招いている場合も少なくありません。特にソフトコンタクトレンズは、レンズから蒸発した水分を涙から補う性質があるため、ドライアイのリスクが高くなります。なかでも水分量の多い高含水レンズは、蒸発する水分量が多く涙を大量に吸収するため、ドライアイや目の傷に一層の注意が必要です。
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目に付いた傷を放置すると、いったいどのようなトラブルが起こるのでしょうか。目の傷がきっかけで発症しやすい病気を、原因とともに紹介します。
「角膜びらん」は、角膜上皮(黒目の一番外側にある薄い膜)に傷が付いて、部分的にはがれた状態を指します。
角膜びらんは、爪で目を引っかいてしまった、ほこりなどの異物が入った、レンズを外さずに眠ってしまった、長時間強い紫外線を浴びた、といった場合に生じることがあります。
おもな症状は、目の痛みや充血、ゴロゴロとした違和感などのほか、物がまぶしく見える、涙がなかなか止まらない、などです。治療には、抗菌薬入りの目薬や眼軟膏を使います。
角膜上皮は再生スピードが速いため、傷が付いても治りやすく視力障害も残りにくいとされていますが、再発する場合もあるため注意が必要です。
「角膜潰瘍」は、角膜(黒目)の表面がただれて、角膜の深い部分に影響がおよんでいる状態です。
角膜潰瘍はアレルギーなどが原因で起きる場合もありますが、傷から侵入した細菌やウイルスに感染して生じることもあります。
おもな症状は角膜びらんとほぼ同じで、目の痛みや充血、目のゴロゴロ感、物がまぶしく見える、涙がなかなか止まらない、などです。ただし、症状が悪化すると角膜穿孔(角膜に穴が開いた状態)を起こすこともあります。
治療は原因により異なりますが、感染が原因の場合は、抗菌薬や抗ウイルス薬、抗真菌薬入りの目薬で治療するのが一般的です。ただし、視力が低下するほど角膜が濁っている場合は、角膜移植が必要になることもあります。
「角膜感染症」は、細菌やカビ、ウイルスやアカントアメーバなどが角膜に感染して炎症を起こしている状態です。
通常、角膜上皮に細菌やカビなどが付着しただけで、感染症を起こすことはありません。しかし、目に傷が付いていると角膜の奥まで細菌やアカントアメーバなどが侵入し、角膜感染症を起こすことがあります。コンタクトレンズを使っている場合、レンズに付着したアカントアメーバなどが目に侵入することもあるため、特に注意が必要です。
角膜感染症のおもな症状は、目の痛みや充血、目やに、まぶたの腫れ、涙が止まらない、などですが、角膜が白く濁って視力が低下する場合もあります。
治療には、感染症の原因に応じて抗菌薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬を使用します。症状が軽い場合は目薬で治療できますが、点滴による治療が必要になることも珍しくありません。
それでは、目に傷が付いたときはどうすれば良いのでしょうか。コンタクトレンズが装用できるかどうかも含めて対処法を解説します。
目に傷が付いているときは、コンタクトレンズを装用しないでください。傷が付いているかどうかわからなくても、目に不快な症状や違和感がある場合は念のためレンズの装用を控えましょう。
目に傷が付いている状態でコンタクトレンズを装用すると、傷の治りが遅くなったり、傷口から病原菌が侵入して感染症につながったりするおそれがあります。また、コンタクトレンズを使用すると目が乾燥して涙で雑菌や汚れが流れにくくなるため、その点でもおすすめできません。
さらに、コンタクトレンズを装用していると目薬や眼軟膏なども使いにくくなります。薬を使用するたびに外すのは手間なうえ、外したときの保管状況が悪いとレンズに雑菌が付着するリスクもあるため、かえって症状を悪化させることになりかねません。
したがって、目の傷が治るまでコンタクトレンズは装用しないでください。装用の再開は、眼科医の指示に従うとよいでしょう。
市販の目薬を自己判断で使用するのはおすすめできません。目に傷が付く以前に医師から処方された目薬が手元にある場合でも、医師の指示を確認せずに使用するのは避けてください。原因に応じた目薬を使わないと、症状がさらに悪化するおそれがあります。
医師に相談して市販の目薬を使う場合、あるいは医師から処方された目薬を使う場合であっても、用法用量はきちんと守らなくてはなりません。目薬を使いすぎるとかえって目が傷付いてしまうこともあるため、とても危険です。
なお、市販の目薬には防腐剤が添加されているものもあります。やむを得ず市販の目薬を使う場合は、あらかじめ医師・薬剤師に相談しましょう。
目に明らかに傷が付いている場合はもちろんのこと、目に何らかの異常がある場合は痛みがなくても早めに眼科を受診してください。
目の傷を放置すると、視力が低下したり失明したりすることがあります。症状がひどい場合は、点滴などによる治療が必要になることもあるでしょう。
もっとも、目に傷が付いても自覚症状があるとは限りません。また、目に傷があってもコンタクトレンズを装用すると傷がカバーされてしまうため、痛みに気付きにくくなる場合もあります。
このように、特に気になる症状がない場合でも目に傷が付いていることはあるため、定期的に眼科を受診することはとても大切です。
目に傷が付いても、痛みが生じるとは限りません。目の充血やかすみ目、違和感など痛み以外の症状があらわれることもあるうえ、まったく自覚症状がない場合もあります。しかし、目の傷を放置してはいけません。目の傷を放置すると、傷から雑菌などが侵入して視力低下や失明を招くこともあります。
目に傷が付く原因はいろいろありますが、ドライアイやコンタクトレンズの装用が原因になっている場合も少なくありません。コンタクトレンズを使用している方は、目に痛みなどがなくても定期的に眼科を受診し、医師に目の健康状態をチェックしてもらうようにしてください。
公開日:2023/3/11