健康診断や学校検診で受けた視力検査の結果が悪く、眼科受診をうながされたことはありませんか。
視力検査の結果は、具体的な数値ではなくA~Dの4段階で評価されることが多いため、どの程度視力が悪いのかはっきりわからないことがあります。
特に子どもの場合、どれくらい見えているのか把握が難しいため、視力矯正をするべきか悩む保護者の方も多いでしょう。
本記事では、視力検査の判定基準や各判定における視力の見え方、視力矯正の必要性や判定結果への対処法を紹介します。
学校検診における視力検査の判定には、どのような基準が設けられているのでしょうか。この章では、視力検査の判定基準、判定別の見え方を解説します。
学校の視力検査は、学校生活における目の見え方を知ることを目的としています。学校検診では、短時間で実施できる370(サンナナマル)方式での検査が多く活用されています。370方式とは、「0.3」「0.7」「1.0」の3種類の視力表を使用する検査方法です。A~Dの4段階で評価を行ないます。
各判定に該当する視力は、以下のとおりです。A~Dの判定基準は全国共通となっています。
□ A判定:視力1.0以上
□ B判定:視力0.9~0.7
□ C判定:視力0.6~0.3
□ D判定:視力0.2以下
各判定で見え方にどのような違いがあるのでしょうか。一般的な目の見え方と子どもの見え方を併せて紹介します。
視力は1.0以上です。十分に見えており、裸眼での日常生活に支障はありません。
子どもの場合、教室の一番後ろの席でも黒板の文字がはっきり見えている状態です。
視力は0.7~0.9です。遠くの文字がにじんで見えにくいと感じる方もいます。裸眼でも問題なく日常生活を送れますが、目の見え方に心配があれば、眼科で目の状態を確認してもらいましょう。
子どもの場合、教室の後ろのほうでも黒板の文字が読めますが、小さい文字だと見えにくい場合があります。また、近視の初期段階の可能性もあるため、眼科受診を検討しましょう。
視力は0.3~0.6です。運転免許の取得・更新では、矯正が必要となる視力です。車の運転時など、必要なタイミングでメガネの使用を推奨します。これくらいの視力になると、少し離れたところにある物が見えにくくなってきます。
なお、普通自動車運転免許の視力条件は、両眼で0.7以上、かつ片目でそれぞれ0.3以上です。C判定だと免許の取得・更新ができない可能性が高いため、早めに眼科受診するほうがよいでしょう。
子どもの場合、教室の後ろのほうだと黒板の文字がよく見えません。また、近視ではなく、目の病気の恐れもあるため、眼科受診が必要となります。
視力が0.2以下の状態です。裸眼で物をはっきりと見ることが難しく、日常生活に支障が出る恐れがあります。メガネの常用が推奨されます。
子どもの場合、教室の前のほうでも黒板の文字がよく見えないため、早急な対応が必要です。
学校などで行なわれる視力検査では、検査者が必ずしも視力検査のプロフェッショナルではないため、判定結果の精度はあまり高くありません。したがって、視力検査の判定結果は、あくまでスクリーニング(多数の検査対象の中から特定の病気などを持っている人を見つけること)ととらえるべきでしょう。
特に子どもの場合、検査のときに目を細めていたり上目づかいで見ていたりすることもあるため、正しい結果が得られていない場合があります。低学年の生徒の場合、受け答えがうまくできなくて判定結果が実際より悪くなっていることもあります。
そのため、目の病気の有無や視力矯正の必要性を適切に判断するためには、眼科受診が必須です。
学校検診や健康診断で視力検査の判定が悪かった場合、近視や遠視、乱視など屈折異常の症状によるものが一般的ですが、ほかにも視力低下の原因となる症状や病気があります。
この章では、視力低下の原因となる症状や病気、受診すべきケースを解説します。
視力低下の原因となるおもな症状や病気は、以下のとおりです。
□ 屈折異常:近視、遠視、乱視の症状
□ 緑内障:眼圧が高くなり視神経が傷つく病気
□ 白内障:水晶体(目のレンズの部分)が白く濁る病気
□ 網膜剥離:網膜(物を見るための神経の膜)が剥がれてしまう病気
□ 加齢黄斑変性:視野の中心部の視野が低下する病気
□ 糖尿病網膜症:血管が壊れ網膜に出血・浮腫が起こる病気
屈折異常や緑内障、網膜剥離は、子どもでも起こり得る症状・病気です。視力検査の結果が悪かった場合は、まずは眼科を受診しましょう。
一般的に、B判定以下なら眼科への受診が必要になります。しかし、視力検査の結果がA判定でも症状によっては眼科受診が必要です。
特に子どもの場合、見えづらさの自覚が乏しいことがあります。そのため、たとえA判定でも以下のような場合は眼科を受診するようにしてください。
□ テレビや本に顔を近寄せて見ている
遠くの物がよく見えないのかもしれません。近視の可能性があります。
□ 目を細めて物を見る癖がある
物が見づらい、あるいはブレて見えているかもしれません。近視や乱視の可能性があります。
□ 首を傾けて物を見ることが多い
両眼の視線がズレているのかもしれません。斜視あるいは斜位の可能性があります。
□ 読書や勉強にあまり集中できない
長時間、物を見ると目が疲れてしまうのかもしれません。遠視の可能性があります
次に、視力矯正が必要になる場合を判定ごとに解説します。
両眼の視力が1.0以上あり、左右の視力差がない場合は、基本的に視力矯正は必要ありません。ただし、見づらさがある場合や気になる症状がある場合は、眼科を受診して詳しい検査を受けてください。
B判定の場合、日常生活に特に問題がなければ、必ずしも視力矯正は必要ありません。しかし、本人が見づらさを感じている場合や目を細めて物を見ていることが多い場合、パイロットや警察官など就業にあたり視力条件がある場合などは、視力矯正を考えるべきでしょう。
視力がC判定に該当する場合、少し離れたところにある物がかなり見づらくなっているため、メガネやコンタクトレンズで視力矯正するのがおすすめです。
特に、小中学生や高校生など活動的な年代は視力矯正が欠かせません。
もっとも、あまり外出しない方・車の運転をしない方などは、近視の度数が進んでいてもそれほど困らない場合があります。室内で過ごすことが多く、手もとが見えれば十分という生活をしているのであれば、裸眼という選択肢もありうるでしょう。
D判定で視力が0.2以下の場合は、見えづらさで日常生活や学校生活に支障をきたす恐れがあります。そのため、できるだけ早く視力矯正をするようにしましょう。
ただし、目に合っていない度数の強いメガネやコンタクトレンズを使うと、見え方に違和感が生じたり、気分が悪くなったりすることがあります。メガネの場合は、弱い度数から開始して、段階的に度数を上げていくとよいでしょう。
コンタクトレンズを選択する場合は、まずはメガネを装着して日常生活を送り、矯正後の見え方に慣れたあとに使用開始することをおすすめします。
最後に、学校検診などで視力がB~D判定とされた場合の対処法や、眼科受診時の注意点などを解説します。
視力検査の結果がB判定以下の場合に、いきなりメガネやコンタクトレンズの販売店へ行くのはNGです。なぜなら、視力検査の結果だけでは屈折異常の種類(近視か、乱視か、遠視か、など)や目の病気の有無はわからないからです。
メガネ店やコンタクトレンズ販売店は医療機関ではないため、検査や診察はできません。必ず眼科を受診して、詳しい検査・診察を受けてください。眼科と販売店が提携している場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
子どもの近視は進行が速い場合もあるため、早めの受診をおすすめします。
子どもの診察では、医師が子ども自身に普段の様子を尋ねることがあります。保護者に問診がある場合も珍しくありません。
子どもだけでは、十分に受け答えができないこともあるため、眼科を受診する際は、必ず保護者が付き添いましょう。
なお、眼科の問診では、下記内容が多く聞かれるため、受診前にお子さんの日頃の様子を思い返しておきましょう。
□ テレビやゲーム、本などを近くで見ることはないか
□ 目を細めて物を見ることはないか
□ 集中力や根気がないと感じることはないか
□ 顔を左右どちらかに傾けて物を見ていることはないか
□ 目をよくこすっていないか
□ 同年代の子どもと比べてよく転ぶなどの症状はないか
□ 視力が悪いことを指摘されたのは今回が初めてか など
学校検診などの健康診断では、視力検査の結果はA~Dまでの4段階で判定されます。眼科受診が必要とされるのは、基本的にB判定以下です。
もっとも、判定結果はあくまで目安であり、症状によってはA判定でも医師の診察が必要になります。また、視力矯正が必要かどうかも、本人の見え方や生活環境などによって変わってきます。
特に子どもの近視は進行が速い場合もあるため、学校検診で視力がB以下と判定されたら速やかに眼科を受診してください。
見た目を変化させたくない場合は、コンタクトレンズでの視力矯正がおすすめです。部活動などでスポーツをする方向けのコンタクトレンズも多数販売されていますので、お子さんがメガネの使用を嫌がる場合は選択肢の一つとして考えてみてください。
更新日:2024/5/21