コンタクトレンズを清潔に保つためには、毎日の洗浄や消毒が欠かせません。長期間使用するハードコンタクトレンズやマンスリータイプのコンタクトレンズでは、定期的なタンパク除去も必要です。
そして、ハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズでは、それぞれ洗い方が異なります。ソフトコンタクトレンズの場合は、洗浄液の種類に応じて洗い方を変えなければいけません。
そこで今回は、コンタクトレンズの正しい洗い方をレンズの種類ごと、洗浄液の種類ごとに解説します。意外に見落としがちな洗浄時の注意点にもふれるので、ぜひ参考にしてください。
ハードコンタクトレンズの洗い方には「こすり洗い」と「つけおき洗い」とがあります。汚れの蓄積を防ぐためには、定期的なタンパク除去も必要です。
こすり洗いは、専用の洗浄液を使います。研磨剤を含んでいる洗浄液もありますが、研磨剤が使用できないコンタクトレンズもあるため、あらかじめ確認しておきましょう。
こすり洗いの方法は以下のとおりです。
・STEP1.コンタクトレンズの外側を洗う
1. コンタクトレンズを水道水か専用すすぎ液ですすぐ。
2. 利き手ではないほうの手のひらの上に、コンタクトレンズの内側(目に直接ふれる面)が上になるようにして乗せる。
3. 洗浄液を数滴たらす。水道水を洗浄液に数滴混ぜる。
4. コンタクトレンズの内側に利き手の人差し指の腹を軽く当てる。
5. コンタクトレンズを前後・左右に動かし、洗浄液を泡立てるようにやさしく30回ほどこする。
・STEP2.コンタクトレンズの内側(目に直接ふれる面)を洗う
1. 利き手の親指・人差し指・中指でコンタクトレンズをはさむ。
2. コンタクトレンズの内側を、親指の腹でやさしく30回ほどこする。
3. 汚れが目立つ場合は、手のひらの上にコンタクトレンズを乗せ、利き手の指先でレンズの内側を丁寧にこする。
・STEP3.すすぎ洗い
水道水か専用すすぎ液で、ぬめりがなくなるまでよくすすぐ。
・STEP4.保存
レンズケースを新しい保存液で満たし、コンタクトレンズを浸して保存する。
つけおき洗いに使う洗浄液には、1液タイプ(コンタクトレンズの洗浄から保存、タンパク除去まで1本で完結するもの)と、2液タイプ(洗浄保存液と液体酵素剤とが別になっているもの)があります。
1液タイプ、2液タイプともに洗浄力はあまり強くありません。したがって、週に数回はこすり洗いを併用してしっかり汚れを落としてください。
こすり洗いを併用するつけおき洗いの方法は以下のとおりです。
・STEP1.コンタクトレンズを洗う
「こすり洗い」で紹介した手順で、コンタクトレンズの外側と内側を洗う。
・STEP2.すすぎ洗い
水道水か専用すすぎ液で、洗浄液のぬめりがなくなるまでよくすすぐ。
・STEP3.保存
1液タイプの場合:新しい保存液でレンズケースを満たし、コンタクトレンズを浸して保存する。
2液タイプの場合:新しい洗浄保存液でレンズケースを満たし、液体酵素剤を1~2滴加えたあと、コンタクトレンズを浸して保存する。
タンパク除去は、デイリーケアだけでは落としきれない汚れを取り除く特別なケアです。
タンパク汚れは蓄積すると落ちにくくなるため、1週間~1ヵ月に1回はタンパク除去を行ないましょう。
また、タンパク除去剤には、酵素タイプと塩素タイプとがあります。それぞれの使い方は以下のとおりです。なお、塩素タイプは頻繁に使うとコンタクトレンズの劣化をまねくため、使用は1ヵ月に1回程度にとどめてください。
・酵素タイプ
1. 新しい洗浄保存液または精製水で、専用ケースまたはレンズケースを満たす。
2. 1.にタンパク分解酵素を含む錠剤や顆粒を入れて溶かす。
3. 2.に洗浄とすすぎが終わったコンタクトレンズを浸す。
4. 規定の時間(2時間以上)を守ってつけおく。
・塩素タイプ
1. 専用ケースまたはレンズケースに次亜塩素酸ナトリウム溶液を入れる。
2. 1.に洗浄とすすぎが終わったコンタクトレンズを浸す。
3. 規定の時間を守ってつけおく。
ワンデータイプ以外のソフトコンタクトレンズは、デイリーケアが必要です。洗浄方法は、使用する洗浄液によって異なります。また、長期間使用するタイプのコンタクトレンズでは、定期的なタンパク除去も必要です。
MPS(マルチパーパスソリューション)は、コンタクトレンズの洗浄、すすぎ、保存、消毒まですべてのケアが行なえるものです。ただし、洗浄力は弱いため、こすり洗いが欠かせません。
MPSを使う場合のケア方法は以下のとおりです。
・STEP1.コンタクトレンズを洗う
1. コンタクトレンズをMPSですすぐ。水道水は使わない。
2. 利き手ではないほうの手のひらの上にコンタクトレンズを乗せる。
3. MPSを数滴たらす。
4. 手のひらの上で、コンタクトレンズの両面をこすり洗いする。
・STEP2.すすぎ洗い
コンタクトレンズの両面をMPSですすぐ。水道水は使わない。
・STEP3.保存・消毒
レンズケースにMPSを満たしてコンタクトレンズを完全に浸し、4時間以上おく。
過酸化水素水系洗浄液は、過酸化水素水の強い消毒力と、発泡作用による洗浄効果をあわせ持つ洗浄液です。消毒後は中和が必要で、中和方法によってケアの手順が異なります。
なお、過酸化水素水系洗浄液をカラコンに使うと変色する場合があるため、注意が必要です。
過酸化水素水系洗浄液を使う場合のケア方法は以下のとおりです。
・中和液を使って中和するタイプ
1. こすり洗いとすすぎが終わったコンタクトレンズを、専用のレンズケースにセットする。
2. レンズケースに消毒液を入れる。
3. 10分以上消毒する。
4. 消毒液を捨てる。
5. 中和液をレンズケースに入れ、6時間以上おいて中和を完了させる。
6. そのまま保存する。
・白金ディスクを使って中和するタイプ
1. こすり洗いとすすぎが終わったコンタクトレンズを、白金ディスク付きの専用レンズケースにセットする。
2. レンズケースに消毒液を入れる。
3. 6時間以上おいて消毒・中和する。
4. そのまま保存する。
・中和用の錠剤を使って中和するタイプ
1. こすり洗いとすすぎが終わったコンタクトレンズを、専用のレンズケースにセットする。
2. レンズケースに、消毒液と中和用の錠剤を入れる。
3. 6時間以上おいて消毒・中和する。
4. そのまま保存する。
ポビドンヨード系洗浄液も、強い洗浄・消毒作用を有するのが特徴です。ポビドンヨード系洗浄液も中和が必要ですが、中和の完了は洗浄液の色の変化(オレンジ色が無色透明に変化)で確認できます。ただし、ヨウ素にアレルギーのある方や、甲状腺疾患のある方などは使用できません。
ポビドンヨード系洗浄液を使う場合のケア方法は以下のとおりです。
1. こすり洗いとすすぎが終わったコンタクトレンズを、専用のレンズケースにセットする。
2. レンズケースに、消毒・中和錠と溶解・すすぎ液を入れる。
3. 4時間以上おいて消毒・中和する。
4. そのまま保存する。
ソフトコンタクトレンズのうち、2ウィークタイプは毎日の洗浄・消毒がきちんとできていれば、タンパク除去は不要です。
利用期間が長いマンスリータイプや通年使用タイプは、定期的にタンパク除去を行なって汚れの蓄積を防ぎましょう。
タンパク除去の方法は、ハードコンタクトレンズの場合と同じです。
一般的に酵素タイプのタンパク除去剤は、ハードコンタクトレンズでもソフトコンタクトレンズでも使えます。一方、塩素タイプのタンパク除去剤は、ハードコンタクトレンズ専用のものとソフトコンタクトレンズ専用のものとがあるため、注意が必要です。
なお、酵素タイプ・塩素タイプともに、コンタクトレンズを装用する前には保存液やMPSでよくすすいでください。
最後に、コンタクトレンズを洗うときの注意点を見ていきましょう。
コンタクトレンズを洗う前には、手や指を石けんできれいに洗ってください。
手に雑菌が残っていると、コンタクトレンズやレンズケースが汚染されて感染症などをまねくおそれがあります。
なお、手指の洗浄が必要なのは、コンタクトレンズを洗うときだけではありません。コンタクトレンズを装用するときや外すときなど、レンズにふれる前には必ず手を洗い、目のトラブルが起きないようにしましょう。
コンタクトレンズをこすり洗いする際には、指の腹を使うようにしましょう。
指先でこすり洗いをすると、コンタクトレンズに爪が当たって傷が付いたり破れたりすることがあります。汚れが気になる場合でも爪でこするのはNGです。
コンタクトレンズの破損を防ぐために、爪は短く切り、ヤスリなどでなめらかにしておくことをおすすめします。
ソフトコンタクトレンズを水道水で洗ってはいけません。
水道水には雑菌が含まれていることもあるため、感染症を引き起こすおそれがあります。また、浸透圧の影響でコンタクトレンズが変形したり、水道水に含まれる成分で変色したりする可能性も否定できません。
ハードコンタクトレンズの場合も、水道水だけで洗うのはNGです。コンタクトレンズに付着した汚れは、水道水だけでは落とせません。また、水道水に含まれる雑菌がコンタクトレンズに付いてしまうこともあります。
コンタクトレンズを清潔に保ち、目のトラブルを防ぐためにも、必ず専用の洗浄液で洗うようにしてください。
コンタクトレンズを洗う際には、洗い方にも注意が必要です。
例えば、ハードコンタクトレンズの内側を洗う際には、親指・人差し指・中指でレンズをはさんで親指の腹でやさしく洗いますが、ソフトコンタクトレンズは基本的に手のひらの上で洗います。指先だけで洗うことはありません。
こすり洗いをする際には、指を必ず一定方向に動かす必要があります。円を描くようにこすると、コンタクトレンズがよじれたりねじれたりして破れてしまうことがあるためです。
自己流の洗い方をしている方は、今一度洗い方を見直してみましょう。
コンタクトレンズを正しく洗えていても、つけおき時間や中和時間を守らなければ安全に使用できません。
コンタクトレンズを洗浄液に浸けておく時間が短いと、十分に汚れが落ちないことがあります。また、中和が必要な洗浄液の場合、中和時間を守らずにコンタクトレンズを使用してしまうと、目に痛みや刺激を感じることがあります。
つけおきや中和には時間がかかるため、面倒に感じるかもしれませんが、各洗浄液の使用方法をしっかり守るようにしましょう。
コンタクトレンズを清潔に使うためには、レンズケースも清潔でなければなりません。
レンズケースからコンタクトレンズを取り出したあと、残っている保存液は毎回捨ててください。さらに流水かMPSできれいに洗い、水気を切って自然乾燥させましょう。「早く乾燥させたいから」といって、水気を布などでふくのは避けてください。布に付着している雑菌で、ケースが汚染されてしまいます。
乾かす時間がない場合や、乾くのに時間がかかる場合などは、あらかじめレンズケースを2つ用意しておき、交互に使うのがおすすめです。
なお、ハードコンタクトレンズのケースは半年~1年ごとに、ソフトコンタクトレンズのケースは少なくとも3ヵ月に1回は交換しましょう。
コンタクトレンズによる目のトラブルを防ぐためには、レンズを清潔に保つことがとても重要です。ただし、コンタクトレンズはレンズの種類や洗浄液の種類によって、洗い方が異なります。使用しているコンタクトレンズのタイプや洗浄液の種類をしっかりと把握したうえで、正しく洗うようにしましょう。
万が一、コンタクトレンズの洗い方が不十分で目に何らかの異常が生じた場合は、すみやかに眼科を受診してください。デイリーケアが苦手な場合は、ワンデータイプへの変更も考えてみましょう。
公開日:2023/4/25