コンタクトレンズを装用していると、目に違和感や痛み、貼り付き感を覚えることがあります。これらは、目の乾燥が原因となって生じることも少なくありません。
ただ、「コンタクトレンズを装用すると、目が乾燥しやすくなる」ということ自体は知っていても、その理由まで把握している方はあまり多くないのではないでしょうか。
そこで今回は、コンタクトレンズで目が乾燥するおもな原因を紹介するとともに、対処法やコンタクトレンズユーザーが特に注意すべきことを解説します。
まずは、コンタクトレンズの装用で目が乾燥するおもな原因を見ていきましょう。
通常、目の表面は薄い涙の層で均一に覆われています。しかし、コンタクトレンズを装用すると涙の層がレンズで分断され、眼球の表面を覆う涙の量が減少する結果、目の乾燥をまねくことになります。
また、涙の量が減ると、まばたきの際にコンタクトレンズとまぶたの間に摩擦が生じるため、それを「乾燥」と感じる場合も少なくありません。
コンタクトレンズの形が目の形状に合っていない場合も、目が乾燥しやすくなります。特に影響するのが、コンタクトレンズのBC(ベースカーブ:レンズの曲がり具合を表す数値)です。
装用したコンタクトレンズは、目に直接触れる形で載っているのではなく、涙の上に浮いた状態になっています。しかし、コンタクトレンズのBCが目に対して小さすぎると、レンズの縁部分が目に直接当たって、涙の流れを妨げてしまいます。それにより涙が瞳全体に行きわたらず、目が乾燥しやすくなるのです。
コンタクトレンズに付いた汚れが、目の乾燥をまねくこともあります。
これは、汚れによってレンズの表面に涙がうまく行きわたらなくなるからです。また、コンタクトレンズの汚れが原因で、ムチン(涙が目の表面に行きわたるのを助ける成分)の分泌が低下する場合もあるようです。
ワンデータイプ以外のコンタクトレンズを使っている方や装用時間が長い方は、レンズに汚れが蓄積されやすいため、特に注意が必要です。
コンタクトレンズのタイプや含水率(ソフトコンタクトレンズに含まれる水分の割合)が、目の乾燥に影響している場合もあります。
ソフトコンタクトレンズは水分を含む素材で作られており、使用していると水分が蒸発して乾燥してきます。すると、レンズがうるおいを維持するために、涙や目の水分を吸収する結果、目は乾燥しやすくなりがちです。
特に水分を多く含む高含水レンズは、レンズのうるおいを保つために大量の涙や水分を吸収するため、目の乾燥をまねくリスクが高くなります。
コンタクトレンズの使用が原因でドライアイになり、目が乾燥している可能性も否定できません。
すでに述べたように、コンタクトレンズを使用すると涙の量が減少して目が乾燥しやすくなります。また、目に合わないコンタクトレンズの使用、レンズの汚れ、レンズによる涙の吸収なども、目の乾燥をまねく原因になり得ます。そして、これらはいずれもドライアイの原因と考えられています。
ドライアイは単なる目の乾燥ではなく「病気」です。放置すると重症化する場合もあるため、早めに眼科で受診して適切な治療を受ける必要があります。
ここからは、コンタクトレンズによる目の乾燥をやわらげる方法をいくつか紹介します。
日常的に取り組める簡単な方法もありますので、目の乾燥が気になる方はぜひ試してみてください。
コンタクトレンズ装用中に目の乾燥が気になる場合は、意識してまばたきの回数を増やすようにしてください。まばたきには、涙の分泌をうながす作用と涙を瞳全体に広げる作用があります。
特に、パソコンやスマートフォンなどを長時間操作すると、まばたきの回数が減りがちです。いつもより意識してまばたきの回数を増やし、また、乾燥を感じる場合は適度に休憩するなどして、目のうるおいを保つようにしましょう。
コンタクトレンズによる目の乾燥をやわらげるためには、レンズの装用時間が長くなりすぎないように気を付けることも大切です。
コンタクトレンズの装用時間が長くなると、目の乾燥を感じやすくなります。
とりわけソフトコンタクトレンズは、装用時間が長くなると涙や目の水分を吸収してレンズのうるおいを維持しようとするため、目の乾燥をまねきやすくなります。装用時間を超えての使用は避けなければなりません。
一般的に、コンタクトレンズの装用時間の目安は、ソフトコンタクトレンズで12~16時間程度、ハードコンタクトレンズで12~14時間程度です。
ただし、目に適した装用時間は目の状態によって変わってきます。目の乾燥を感じる場合は、早めにコンタクトレンズを外してメガネに替えるなどして、目をいたわるようにしましょう。
目の乾燥を防ぐためには、空気の乾燥にも注意しなければなりません。
空気が乾燥していると、蒸発する涙の量が増え、目が乾燥しやすくなります。コンタクトレンズを使用していると、目の表面を覆う涙の量が減って乾燥しやすくなるため、より一層の注意が必要です。
特に冬場やエアコン使用時は、空気の乾燥が進みます。加湿器などを使って適度な湿度を保ち、目が乾燥しにくい環境を整えるようにしましょう。
なお、湿度を保っていても、エアコンなどの風が目に直接当たると目が乾燥しやすくなります。そのような場合は、場所を移動したり風向きを変えたりするなどして、目の乾燥を防ぎましょう。
目薬やコンタクトレンズ装着液などを利用して、目にうるおいを与えるのも、目の乾燥を防ぐ良い方法です。
目薬は、涙に近い成分を含む人工涙液や、角膜保護成分配合のものを選びましょう。ただし、防腐剤が入っているものは避けましょう。これは、防腐剤がレンズの下に蓄積されたりレンズに吸収されたりして、目や涙に影響をおよぼす可能性が指摘されているためです。必ず防腐剤フリーのコンタクトレンズ専用目薬を選んでください。
なお、目薬をさしすぎると目に傷が付いてしまうことがあります。目薬を使用する際にはあらかじめ説明書に目を通し、用法用量を守ることを心がけてください。
目薬で目の乾燥が改善しない場合は、コンタクトレンズ装用液の使用も考えてみましょう。
装用液を使用すると、保湿成分がコンタクトレンズと目の間でクッションのような働きをするため、装用時の不快感が抑えられると同時に、目の乾きがやわらぎます。
目の乾燥を防ぐためには、レンズケアにもしっかり取り組まなくてはいけません。
ワンデータイプ以外のコンタクトレンズは、デイリーケアを欠かさないようにしましょう。
「こすり洗い不要」とされている洗浄液を使用している場合でも、できるだけこすり洗いを併用して、コンタクトレンズを清潔に保ってください。
マンスリータイプや通年タイプのコンタクトレンズは、定期的なタンパク除去も必要です。
また、レンズケースも毎日洗ってください。ハードコンタクトレンズ用のレンズケースは6ヵ月~1年に1回、ソフトコンタクトレンズ用のレンズケースは1.5~3ヵ月に1回は交換して、汚染・破損を防ぎましょう。
レンズケアが面倒な場合・自信がない場合は、毎日のケアが不要なワンデータイプへの変更も考えてみてください。
目の乾燥が続く場合は、眼科で診察を受けて目に合うコンタクトレンズを処方してもらいましょう。
眼科を受診すれば、BCを測定したうえで目の形に合うコンタクトレンズを処方してもらえます。また、目の健康状態の確認を受けたうえで、そのときの目の状態に応じたコンタクトレンズを処方してもらえるでしょう。
ドライアイなど、目の病気がある場合は必要に応じて治療も受けられますし、症状によっては目薬や眼軟膏、飲み薬などを処方してもらうことも可能です。
さらに、コンタクトレンズの装用に関するアドバイスも受けられるため、より安全にレンズを使用できます。
コンタクトレンズを装用すると、涙の層が分断されて目の表面を覆う涙の量が減るため、目が乾燥しがちです。ただ、目の乾燥には、レンズの形やレンズの汚れ、使っているレンズのタイプやドライアイなどが関係している場合も少なくありません。
一方で、コンタクトレンズ装用時の目の乾燥は、まばたきの回数を増やす、装用時間を守る、空気の乾燥を防ぐ、目薬や装着液を使う、きちんとレンズケアをする、といった対策である程度やわらげられます。
ただし、目の症状によっては眼科での治療が必要になる場合もあるでしょう。コンタクトレンズによる目の乾燥が気になる場合は早めに眼科を受診し、適切な治療や指導を受けるようにしてください。
公開日:2023/5/18