コンタクトレンズは、専用の保存液や洗浄保存液で保存しなければなりません。
しかし、「コンタクトレンズの保存液の予備がなかった!」「旅行のときに保存液を持っていくのを忘れた……」などと困った経験がある方もいることでしょう。
このような場合に、コンタクトレンズの保存液の代わりとして使えるものはないのでしょうか。
今回は、コンタクトレンズの保存液の役割と成分、ほかのレンズケア製品との違いなどのほか、保存液を使う際の注意点やない場合の対処法を解説します。
まず、コンタクトレンズの保存液の役割や成分、ほかのケア製品との違いなどを知っておきましょう。
コンタクトレンズの保存液とは、その名のとおりコンタクトレンズを保存するための専用液です。雑菌などから目を守り、コンタクトレンズを快適に装用するために欠かせないケア製品で、保存時にコンタクトレンズの乾燥を防ぐ役割もあります。
最近は、ハードコンタクトレンズ用もソフトコンタクトレンズ用も保存のみに特化した製品は少なく、洗浄・保存の機能を併せ持つ洗浄保存液が主流です。
コンタクトレンズの保存液には、うるおい成分や消毒成分、防腐剤などが含まれています。
うるおい成分は、コンタクトレンズ装用時の乾燥感やゴロゴロした不快感などをやわらげるだけではなく、汚れの付着やレンズの曇りを防ぐ効果も期待できるものです。
消毒成分は、眼病の原因となる雑菌などに対して効果を発揮するものが配合されています。目に悪影響をおよぼしにくく、レンズに吸収されにくい消毒成分を使用している製品もあります。
コンタクトレンズの保存液に含まれる防腐剤は、目にもコンタクトレンズにも影響をおよぼしにくい「塩酸ポリヘキサニド」や「塩化ポリドロニウム」などです。
いずれの成分も、目やコンタクトレンズに刺激を与えにくいので、安心して使えます。
それでは、コンタクトレンズの保存液とほかのケア製品は何が違うのでしょうか。ここでは、保存液と洗浄液、たんぱく除去剤との違いを見ていきましょう。
・洗浄液
コンタクトレンズ洗浄液は、コンタクトレンズに付着している汚れや雑菌を落とすための専用液です。
洗浄液の成分は製品により異なりますが、たんぱく汚れや脂質汚れを除去する成分や界面活性剤などが含まれています。ハードコンタクトレンズ用の洗浄液のなかには、研磨剤を含むものもあります。
なお、近年主流となっている洗浄保存液は1本で洗浄も保存もできますが、洗浄に特化した製品は保存液として使用できません。
・たんぱく除去剤
たんぱく除去剤は、コンタクトレンズに付着したたんぱく汚れを取り除く専用液です。
酵素で汚れを分解する酵素系洗浄剤と、次亜塩素酸ナトリウム溶液を使う塩素系洗浄剤があります。
たんぱく除去剤は、週1回~月1回程度の使用で十分です。ただし、塩素系洗浄剤は洗浄力が強いため、月1回程度の使用にとどめなければなりません。
ここからは、コンタクトレンズの保存液や洗浄保存液を使う際の注意点を詳しく解説します。
保存液や洗浄保存液には、ハードコンタクトレンズ用とソフトコンタクトレンズ用があります。購入の際には、必ずレンズの種類に応じたものを選びましょう。
カラコンの場合は、ソフトコンタクトレンズ用の製品を選べば大丈夫です。ただし、過酸化水素系の洗浄保存液は色が変化するおそれがあります。したがって、MPS(マルチパーパスソリューション)など過酸化水素系以外の洗浄保存液を選ぶのがおすすめです。
保存液を使用するときに限りませんが、コンタクトレンズにふれる前やケアする前にはハンドソープなどでしっかり手を洗い、清潔なタオルなどで水分をふき取ってください。
手指に雑菌が残っていると、コンタクトレンズやレンズケース、ケア製品などが汚染され、感染症をまねくおそれがあります。
なお、タオルは洗濯後未使用のものが理想です。洗濯の手間がないペーパータオルなどを利用するのもよいでしょう。
保存液や洗浄保存液が入っている容器の取り扱いにも注意が必要です。
特に注ぎ口には、絶対に手をふれないでください。容器の先端をコンタクトレンズに接触させるのも良くありません。
注ぎ口が汚染されると、ボトル内で雑菌が増殖するおそれがあります。保存液や洗浄保存液の汚染に気付かずに使用してしまうと、目の健康を害するリスクが高まるため大変危険です。たとえハンドソープなどで手を洗ったあとでも、注ぎ口にはふれないように気を付けましょう。
保存液や洗浄保存液は、ほかの容器に移し替えてはいけません。ほかの容器に移し替えたあと、元のボトルに戻すのもNGです。保存液や洗浄保存液は移し替えると品質が保持されず、期待した効果が発揮されないおそれがあります。また、移し替えの際にボトルや保存液などが汚染されるリスクも否定できません。
旅行などの際には、使い切りできる小容量のケア用品を用意しましょう。また、ケア用品が必要ないワンデータイプのコンタクトレンズを使うのもおすすめです。
保存液や洗浄保存液を適切な環境で保管することも大切です。使用後は蓋をしっかり閉めて、雑菌や埃の侵入を防ぎましょう。
そして、直射日光の当たらない涼しい場所で保管してください。日差しの強い場所や高温になる場所で保存液や洗浄保存液を保管すると、成分が変質するおそれがあります。
未開封の保存液・洗浄保存液も品質の劣化を防ぐために、凍結を避けて冷暗所で保管してください。
保存液や洗浄保存液にも使用期限があります。使用期限が切れた保存液や洗浄保存液を使うと、コンタクトレンズが劣化したり眼障害をまねいたりするおそれがあるため、使用期限を守って使いましょう。
なお、保存液や洗浄保存液の使用期限は、容器本体や外箱などに記載されています。ただし、この使用期限は未開封で適切な環境で保管された場合のものです。開封後は、おおむね1ヵ月を目安に使い切ってください。
洗浄液の解説でもふれましたが、洗浄に特化したケア製品を使ってコンタクトレンズをつけ置き保存することはできません。
保存液と洗浄液は目的が異なるケア製品なので、基本的に成分が異なります。また、洗浄液に長時間コンタクトレンズを浸すとレンズの変形や破損につながり、眼障害をまねくことにもなりかねません。
このようなことから、保存液や洗浄保存液の代用として洗浄液を使うのは避けてください。
最後に、コンタクトレンズの保存液や洗浄保存液が手もとにないときの対処法を紹介します。
水道水をコンタクトレンズの保存液や洗浄保存液の代わりに使用するのは、絶対に避けてください。
ハードコンタクトレンズは、一晩程度なら水道水で保存してもそれほどダメージは生じませんが、長期にわたり水道水を保存液代わりに使用するのは避けなければなりません。
水道水に含まれる塩素でレンズが変化したり、雑菌が繁殖しやすくなったりするため、眼障害をまねくリスクが高まります。
一方、ソフトコンタクトレンズは短時間であっても水道水で保存するのはNGです。
水道水にソフトコンタクトレンズを浸すと、含水率が変化して変形するおそれがあります。また、水道水に含まれるアカントアメーバに感染すると失明する場合もあるため、大変危険です。
目に入れても特に問題がない生理食塩水や目薬、洗眼液などであっても、保存液や洗浄保存液の代わりに使うのはNGです。
そもそも、コンタクトレンズの保存液や洗浄保存液に代替品はありません。
生理食塩水や目薬、洗浄液などは保存液や洗浄保存液と成分が異なるため、コンタクトレンズの変形や変色などをまねくおそれがあります。
また、洗浄効果も期待できないため、汚れの蓄積や雑菌が繁殖するリスクも否定できません。
手もとに保存液がない場合や、外出先でどうしても保存液が必要になった場合は、薬局やコンビニエンスストアなどで保存液や洗浄保存液を購入しましょう。
保存液や洗浄保存液の代わりに使えるものはないため、自宅に1本は予備を用意しておくのがおすすめです。ただし、まとめ買いをする場合は、使用期限や保管場所に注意してください。
外出先で保存液が必要になった場合は、使い切りサイズを購入すると、かさばらなくてすみます。
なお、やむを得ずいつもと違う製品を購入する場合は、自分の使っているレンズに対応しているかどうかをきちんと確認してください。
コンタクトレンズを適切に保存するには、専用の保存液や洗浄保存液を用意しなければなりません。保存液は、コンタクトレンズや目を雑菌から守り、快適な装用をするためのケア製品です。洗浄液や生理食塩水、目薬などで代用すると、コンタクトレンズの変形や変色、眼疾患をまねきかねません。保存液がない場合は、薬局などで購入しましょう。
保存液や洗浄保存液の用意が面倒という場合には、ケア製品が必要ないワンデータイプのコンタクトレンズがおすすめです。眼科で希望を伝えれば、目の状態や生活パターンなどに応じて、より良いコンタクトレンズを処方してもらえるでしょう。
公開日 2023/5/31