コンタクトレンズを目に入れるとき、あるいは装用中や外したあとに、目の痛みを感じたことはないでしょうか。
コンタクトレンズで目が痛くなる原因はさまざまですが、放置すると重篤な眼障害に至るケースもあるため、注意が必要です。一方で、使用するコンタクトレンズを変えるだけで目の痛みがあらわれにくくなることもあります。
そこで今回は、コンタクトレンズで目が痛くなる原因と対処法を解説するとともに、目に優しいコンタクトレンズの選び方を紹介します。目の痛みに悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
コンタクトレンズのカーブは目の形状に合わせて設計されており、レンズ自体は表面張力で涙の上に浮いた状態でとどまっています。そのため、コンタクトレンズが目に直接触れて痛みを感じることは基本的にありません。
では、なぜコンタクトレンズで目が痛くなることがあるのでしょうか。
目が痛くなるおもな原因としては、「目がコンタクトレンズに慣れていない」「コンタクトレンズに不具合がある」「目に何らかのトラブルがある」などが挙げられます。
特に、コンタクトレンズの不具合や目のトラブルは、放置してはいけません。重篤な眼障害を防ぐためにも、できるだけ早く適切な方法で対処することが大切です。
コンタクトレンズで目が痛いときの対処法は、原因によって異なります。まず、目がコンタクトレンズに慣れていない場合に生じる痛みの対処法を知っておきましょう。
目にとってコンタクトレンズは異物なので、装用にともない違和感や異物感を覚えることは珍しくありません。特に、初めてコンタクトレンズを使用する場合や久しぶりにコンタクトレンズを装用する場合は、目が慣れるまで痛みを感じることがあります。
そのような場合はいきなり長時間装用するのではなく、毎日少しずつ装用時間を長くして目を慣らしていきましょう。
ソフトコンタクトレンズの場合は、1日8時間程度の装用から始めてください。次の日からは毎日1~2時間ずつ装用時間を延ばし、1週間程度かけて目を慣れさせます。目の痛みがない場合でも、少しずつ装用時間を延ばして目の負担を抑えるようにしましょう。
ハードコンタクトレンズはソフトコンタクトレンズに比べて異物感が強いため、使い始めの3日間は1日3時間を目安に装用してください。翌日からは装用時間を毎日1時間ずつ延ばし、2~3週間程度かけてゆっくり目を慣らしていけば、少しずつ違和感や痛みが気にならなくなるでしょう。
次は、コンタクトレンズが目に合っていない、レンズケアが不適切など、コンタクトレンズの不具合が原因で目が痛いときの対処法を紹介します。
コンタクトレンズは、BC(ベースカーブ:レンズの曲がり具合を表す数値)が合っていないと目にうまくフィットしません。目に合わないコンタクトレンズを使うと、目に痛みが生じることがあります。
例えば、BCが小さすぎるコンタクトレンズを装用すると、眼球が圧迫されて痛みを感じることがあります。逆にBCが大きすぎるとコンタクトレンズがズレやすくなり、痛みや違和感を覚えることがあります。
しかし、BCは眼科を受診しなければ測定できません。BCを測らずに自己判断で購入したコンタクトレンズで目の痛みが生じている場合は、早めに眼科を受診して目に合うコンタクトレンズを処方してもらいましょう。
コンタクトレンズのすすぎが十分でなく、保存液や洗浄保存液などがレンズの表面に残っていると、目に痛みを感じることがあります。また、過酸化水素水系洗浄液を使用している場合は、中和が不十分だと目に痛みを感じることがあるため注意が必要です。
コンタクトレンズのすすぎが不十分で目に痛みが生じている場合は、いったんコンタクトレンズを外してすすぎ直せば、違和感なく装用できます。すすぎ直しても目に痛みが生じるなら、洗浄を最初からやり直してください。それでも痛みが治まらないときには、早めに眼科を受診して目の状態を調べてもらいましょう。
コンタクトレンズに付いたホコリやメイク汚れが、目の痛みの原因となることもあります。コンタクトレンズ装用時に急に目の痛みが生じた場合には、黒目とレンズの間に砂などが入り込んでいるかもしれません。また、コンタクトレンズに付着したタンパク汚れなどが原因で、目が痛むケースもあります。
このような際には、すぐにコンタクトレンズを外して、レンズをていねいに洗浄してください。タンパク汚れが疑われる場合は、タンパク除去剤を使用してコンタクトレンズを清潔に保ちましょう。
コンタクトレンズを清潔にしても目の痛みが続くのは、角膜に傷が付いているからかもしれません。早めに眼科を受診して適切な治療を受けるようにしましょう。
ソフトコンタクトレンズは大変やわらかな素材で作られているため、レンズケースやブリスターパックから取り出す際に反転してしまうこともあるでしょう。しかし、反転に気付かず、裏表を逆にして装着すると目に痛みを感じることがあります。これは、コンタクトレンズの反転にともない、カーブが目に合わなくなってしまうためです。
反転したコンタクトレンズを装用すると、サイズの合わないコンタクトレンズを装用しているときと同じ状態になります。まばたきのたびにレンズが動き、角膜に傷を付けてしまうこともあるため大変危険です。
コンタクトレンズの反転が疑われる場合は、レンズを外して裏表を確認してみましょう。ただし、ワンデータイプのコンタクトレンズは一度外したら再装用できないため、そのまま捨ててください。ワンデータイプ以外のコンタクトレンズは、専用のケア用品で洗浄したあと、裏表をしっかり確認して再装用しましょう。
コンタクトレンズの変形や破損が原因で、目に痛みが生じることもあります。
変形・破損している、あるいは傷が付いているコンタクトレンズは、装用すると目のトラブルをまねくリスクが高いため使用してはいけません。使用期間が残っている場合でも廃棄して、必ず新しいコンタクトレンズを装用してください。
また、洗い方や保管方法などを見直し、変形や破損につながるケアをしていないかチェックするのも大切です。そして、装用前にはコンタクトレンズの変形や破損の有無をしっかり確認して、目のトラブルを未然に防ぐようにしましょう。
ここからは、目に何らかのトラブルがあって痛みが生じている場合の対処法です。
目が乾燥していると、コンタクトレンズが浮いている涙の層が薄く不安定になるため、角膜とレンズが接触して痛みを感じやすくなります。また、目が乾燥している状態でコンタクトレンズを装用すると、レンズとまぶたの裏側がこすれて目の痛みを感じることがあります。
このような目の乾燥や涙不足による目の痛みを改善するには、人工涙液を点眼したり装着液を使ったりするのがおすすめです。ほかには、瞳全体へ涙を行きわたらせるために、意識してまばたきをするのもよいでしょう。
エアコンなどの影響で空気が乾燥している場合は、加湿器などを利用して適度な湿度を保つと目の乾燥を防ぎやすくなります。
目に傷が付いていると、コンタクトレンズ装用時だけではなくレンズを外したあとも痛みを感じます。
目に傷が付く原因は、異物や外傷、目に合わないコンタクトレンズの装用、誤った方法でのコンタクトレンズ使用、ドライアイなどさまざまです。
目の傷を放置すると、感染症など重篤な眼疾患をまねくおそれがあります。そのため、目に傷が付いていると考えられる場合は無理にコンタクトレンズを装用せず、できるだけ早く眼科を受診してください。
同時に普段の使用方法やレンズケアの内容なども見直し、目に傷が付くような使い方やコンタクトレンズの破損につながるようなケアをしていないかをチェックしましょう。
細菌やウイルスなどによる感染症で、目に痛みが生じることもあります。
痛みの程度は、感染症の種類や目の状態により異なりますが、充血や目やにをともなう場合は要注意です。すぐにコンタクトレンズを外して、眼科を受診してください。
感染症を繰り返す場合は、コンタクトレンズの使用方法やレンズケアの方法が誤っているおそれがあります。不安がある方は眼科で指導を受け、コンタクトレンズやレンズケースを清潔に保つ方法をしっかりと身に付けましょう。
眼精疲労や目の酸素不足も、目が痛くなる原因の一つです。
コンタクトレンズの度数が合っていなかったり、パソコンやスマートフォンを長時間使用したりするなど、目を酷使すると眼精疲労で目の奥に痛みを感じることがあります。また、コンタクトレンズを長時間装用して目が酸素不足の状態になると、角膜に傷が付きやすくなるため、目に痛みが生じるケースもあります。
このような目の痛みを防ぐには、目を使いすぎないように適度に休憩を取ることが大切です。パソコンなどの使用が避けられない場合は、目が疲れにくいようにディスプレイの位置や部屋の明るさを調節するとよいでしょう。
また、コンタクトレンズを長時間装用しない、酸素透過率の高いコンタクトレンズに替えるなど、コンタクトレンズの使用方法や種類を工夫するのもおすすめです。
最後に、目が痛くなりにくいコンタクトレンズの選び方を紹介します。
目の痛みを防ぐには、度数やBCの合っているコンタクトレンズを使用することが大切です。
コンタクトレンズの度数が合っていないと、眼精疲労から目の痛みをまねくことがあります。また、BCが合っていないコンタクトレンズを装用すると、ズレたりゴミなどが入りやすくなったりするため、目の痛みが生じることも多くなるでしょう。
目に合うコンタクトレンズを選ぶためには、眼科受診が欠かせません。定期的に眼科で検査を受け、度数やBCの合っているコンタクトレンズを処方してもらいましょう。
目が乾きやすい方・涙量の不足を指摘されている方・コンタクトレンズを長時間装用する方は、低含水レンズを選ぶようにしましょう。低含水レンズは高含水レンズに比べて目の水分を吸収しにくいため、乾燥にともなう目の痛みに悩んでいる方におすすめです。
特に、シリコーンハイドロゲル素材のコンタクトレンズは、含水率が低く酸素透過性が高いため、酸素不足による目のトラブル予防にも適しています。
コンタクトレンズに付着する汚れが原因で、目の痛みが生じることもあります。そのため、汚れの付きにくさでコンタクトレンズを選ぶのも良い方法です。
タンパク汚れが気になる場合は、非イオン性素材のコンタクトレンズを選ぶようにしましょう。化粧品や体内の分泌物などに含まれる脂質汚れが気になる場合は、イオン性レンズがおすすめです。タンパク汚れも脂質汚れも寄せ付けたくないなら、イオン性レンズと非イオン性レンズの特性を兼ね備えた、両性イオン素材のレンズを選んでください。
デイリーケアが面倒な場合は、ワンデータイプのコンタクトレンズを選びましょう。ワンデータイプなら汚れを次の日以降に持ち越さないため、毎回清潔なコンタクトレンズを使えます。
コンタクトレンズで目が痛くなる原因はいろいろありますが、痛みを感じるなら無理にコンタクトレンズを装用してはいけません。特に、コンタクトレンズに不具合がある場合や、目に何らかのトラブルがある場合は、適切な対処をしないと重篤な眼障害をまねくおそれがあります。
気になる症状がある方は、できるだけ早く眼科を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。
なお、目に痛みがない場合でも眼科で目の健康状態をチェックしてもらうことは大切です。定期的に眼科を受診して、目に合うコンタクトレンズを処方してもらいましょう。
公開日:2023年6月