年齢とともに、体にはさまざまな変化があらわれてきます。もちろん、目も例外ではありません。ピントを合わせる機能が少しずつ低下して手元が見えづらくなる「老眼」も、年齢による変化の一つです。
しかし、老眼は加齢にともないあらわれる生理現象なので、治す方法はありません。見えづらさを解消するためには、何らかの方法で見え方を矯正する必要があります。
そこでおすすめなのが、遠近両用コンタクトレンズです。この記事では、遠近両用コンタクトレンズの特徴やメリットなどのほか、使用を始める「適齢期」などを紹介します。
遠近両用コンタクトレンズの使用を迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
まず、遠近両用コンタクトレンズの特徴やメリットを紹介します。
近視などの矯正に使用する通常のコンタクトレンズでは、レンズに入っている度数は1つのみです。しかし、遠近両用コンタクトレンズでは、1枚のレンズに近くと遠くを見るための度数がそれぞれ分布されています。そのため、近くでも遠くでも見たい位置にピントを合わせて、自然に物を見ることが可能です。
また、遠近両用コンタクトレンズはハードコンタクトレンズもソフトコンタクトレンズもあるため、乱視の程度やライフスタイルに合わせて選べます。
ただし、遠近両用コンタクトレンズの度数と老眼鏡の度数が一致するとは限りません。目に合うコンタクトレンズを選ぶためには、眼科での診察が必要です。
老眼を矯正するツールとしては老眼鏡もありますが、老眼鏡は近くの物を見やすくすることしかできないため、遠くを見る際には外さなければなりません。しかし、遠近両用コンタクトレンズを使用すれば遠くも近くも見やすくなるため、眼鏡のかけ外しのわずらわしさがなく、快適に過ごせます。
また、遠近両用コンタクトレンズであれば見た目の印象が変わらないため、老眼を周りの人に気付かれることもありません。
眼鏡とは違ってフレームがないため視野を広く確保できますし、運動する際にも便利です。感染症対策でマスクをしている場合でも、遠近両用コンタクトレンズならば呼気でレンズが曇ることがないため、ストレスを感じないでしょう。
さらに、レンズケアが面倒だと感じる場合は使い捨てタイプのレンズを使用するなど、ライフスタイルに合わせてレンズを選べるのも大きなメリットです。
このように、遠近両用コンタクトレンズには、老眼鏡にはないさまざまなメリットがあります。
それでは、遠近両用コンタクトレンズはいつ頃から使い始めると良いのでしょうか。ここでは、遠近両用コンタクトレンズの適齢期と、早めに使い始めるのがおすすめの理由を解説します。
遠近両用コンタクトレンズの使用に、年齢制限はありません。
一般的には40代半ば頃から使い始めますが、目の状態によっては40歳未満から使用する場合もあります。見づらさを感じるようになったら、早めに眼科を受診して遠近両用コンタクトレンズの使用を検討してください。
「早い時期から遠近両用コンタクトレンズを使うと、老眼がどんどん進むのでは?」と考える方もいるようですが、コンタクトレンズを使っても使わなくても老眼は進行します。
一方、視力を矯正せず、無理をして近くを見ようとすると目に大きな負担がかかるため、かえって目に良くありません。老眼による見づらさをがまんし続けると眼精疲労をまねくこともあるため、「老眼かも?」と思ったら、早めに眼科を受診しましょう。
なお、コンタクトレンズの着け外しやケアに支障がなければ、遠近両用コンタクトレンズは何歳まででも使えます。
遠近両用コンタクトレンズは、老眼初期から使い始めるのがおすすめです。
遠近両用の場合、1枚のレンズに遠くを見るための度数と近くを見るための度数が分布されており、見え方に慣れるまでに少し時間がかかります。慣れるまでの期間は、ソフトコンタクトレンズで1週間程度、ハードコンタクトレンズで2週間程度が目安です。コンタクトレンズの使用経験がある人は、数日で慣れることもあります。
なお、慣れるまでの期間は、コンタクトレンズの加入度数(近くを見るための度数と遠くを見るための度数の差)が低いと短くてすむことが多いようです。
したがって、遠近両用コンタクトレンズの使用を検討している場合は、加入度数が低い老眼初期にデビューすることをおすすめします。
次は、遠近両用コンタクトレンズの見え方や注意点を見ていきましょう。
遠近両用コンタクトレンズを装用すると、近くは良く見えるようになりますが、遠くの見え方は一般的なコンタクトレンズより質が落ちる場合があります。
もっとも、見え方には個人差がありますし、メーカー違いのレンズを選ぶだけで見え方が変わる場合も少なくありません。そのため、「ちょっと合わないな」と感じたら、別のメーカーのレンズを試してみるのも方法の一つです。
また、遠近両用コンタクトレンズを装用していると、暗いところで見づらさを感じたり、夜間の屋外では光がにじんで見えたりする場合もあります。
危険を避けるためにも、細かい作業や車の運転は、遠近両用コンタクトレンズの装用に十分慣れてから行なうようにしてください。
遠近両用コンタクトレンズの購入にあたり、価格が気になる方も多いでしょう。
遠近両用コンタクトレンズのワンデータイプは、両眼30日分で1万円前後です。2ウィークタイプであれば、3ヵ月分が1万円前後で購入できます。
毎日のように装用する場合はコストパフォーマンスの良い2ウィークタイプ、週に数回しか使用しない場合はワンデータイプを選ぶとよいでしょう。ワンデータイプは、デイリーケアを面倒と感じる方にもおすすめです。
なお、2ウィークタイプはレンズケアを要するため、レンズ代のほかにケア用品代が必要になります。
遠近両用コンタクトレンズのケア方法は、通常のレンズと変わりありません。ワンデータイプは基本的にケア不要ですが、それ以外のレンズは毎日ケアが必要です。
遠近両用ハードコンタクトレンズの一般的なケア方法は、以下のとおりです。
1. コンタクトレンズを外す
2. レンズを流水ですすぐ
3. レンズの両面を洗浄液でこすり洗いする
4. 流水で洗浄液を洗い流す
5. 保存液で満たしたレンズケース内にレンズを保存する
ハードコンタクトレンズは一般的に2~3年ほど使用するため、定期的なタンパク除去が欠かせません。少なくとも1週間~1ヵ月に1度はタンパク質除去剤を使用して、レンズを清潔に保つようにしてください。
遠近両用ソフトコンタクトレンズのケア方法は、こすり洗いが必要なMPS(マルチ・パーパス・ソリューション)を使う場合と、過酸化水素系洗浄液などを使う場合で、少し流れが異なります。
・MPS(こすり洗いタイプ)を使う場合
MPSを使う場合は、洗浄から保存までMPSのみで完結します。MPSを使うレンズケアの流れは以下のとおりです。
1. コンタクトレンズを外す
2. レンズの両面をMPSでこすり洗いする
3. MPSでレンズをすすぐ
4. MPSで満たしたレンズケース内にレンズを入れ、4~6時間以上放置する
5. そのまま保存する
コンタクトレンズを洗う際には、レンズの縁部分も忘れずに洗うようにしましょう。
・過酸化水素系洗浄液・ポピドンヨード系洗浄液を使う場合
過酸化水素水系洗浄液やポピドンヨード系洗浄液を使う場合は、MPSの場合と違い中和が必要になります。過酸化水素水洗浄液や、ポピドンヨード系洗浄液を使うレンズケアの流れは、以下のとおりです。
1. コンタクトレンズを外す
2. 専用のレンズケースにコンタクトレンズをセットする
3. ケース内に消毒液(過酸化水素水溶液)と中和剤を入れる
4. 蓋をして、指示された時間以上放置する
5. 朝までそのまま保存する
消毒・保存後、レンズを装用する際には必要に応じてMPSですすいでください。
なお、ポビドンヨード系洗浄液は、甲状腺疾患のある方やヨウ素アレルギーの方は使用できません。
コンタクトレンズを清潔に保つためには、レンズケースケアも大切です。レンズケースのケアをしないと、カビや雑菌が繁殖してコンタクトレンズが汚染されることがあります。レンズケースのケアは、以下のように行なってください。
1. コンタクトレンズを取り出し、ケース内の保存液を捨てる
2. レンズケースを流水かMPSで洗う
3. 水を切り、清潔な場所で自然乾燥させる
ほこりなどで汚染されないように、蓋とレンズケースは伏せた状態で乾燥させましょう。ハードコンタクトレンズのケースの場合は、レンズホルダーも忘れずに洗ってください。
なお、レンズケースは使っているうちに劣化します。ハードコンタクトレンズのケースの場合は半年~1年に1回、ソフトコンタクトレンズのケースは3ヵ月に1回は新しいものに交換しましょう。
ただし、この期間内であっても、カビやバイオフィルムが発生した場合はすぐに廃棄してください。カビやバイオフィルムなどは、消毒してもなかなか除去できません。快適なコンタクトレンズ生活のためにも、汚れの付いたレンズケースは再使用しないようにしましょう。
遠近両用コンタクトレンズは、近くを見るための度数と遠くを見るための度数が1枚のレンズに分布されているレンズです。近くも遠くも自然に見えるため、老眼鏡のような着け外しのわずらわしさはなく、ライフスタイルに合うレンズを選ぶこともできます。
「手元が見づらくなったな」と感じたら、遠近両用コンタクトレンズ適齢期です。老眼が進む前に遠近両用コンタクトレンズを使い始めると、見え方にも早く慣れます。目にかかる負担を減らして快適な毎日を過ごすためにも、近くが見えにくくなったら早めに眼科を受診して遠近両用コンタクトレンズを処方してもらいましょう。
更新日:2024/3/5