パソコンにスマートフォン、ゲームに本など、現代では目を酷使する環境が増えています。そのため、若い頃から視力が低下してしまう方も少なくありません。
「目が疲れたな」と感じたら、無理をしないで目をいたわり、視力低下が進行しないように心がけることも大切です。
そこでこの記事では、自宅やオフィスでも簡単に取り組める視力回復トレーニングを紹介します。トレーニングでは視力回復が期待できないタイプの近視もありますが、視力低下に悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
まずは、視力低下の原因を理解しておきましょう。視力の低下は、遺伝や生活習慣の影響が大きいとされています。
両親がともに強い近視の場合、子どもも近視になる確率が高く、小学校の低学年頃から視力が下がり始める場合が少なくありません。特に、生まれつき眼球が小さい場合に生じる「軸性遠視」や、レンズの調節力以上に目が大きく成長してしまうために生じる「軸性近視」は、遺伝の影響が大きいとされています。
一方、小学校の高学年頃から視力が低下する場合は、生活習慣の影響が大きいようです。特に、勉強やゲーム、読書などで近くを見る機会が増えると、近くの物にピントが合うように眼球が前後に伸びるため、近視が進みやすくなります。
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視力の低下を防ぎたい場合は、視力低下をまねきやすい生活習慣の見直しや、視力回復に効果があるとされるトレーニングなどを試してみてはどうでしょうか。
トレーニングで視力回復を図りたい場合は、物を見る際に重要な働きをする毛様体筋(もうようたいきん)と外眼筋(がいがんきん)を鍛えるのが良いとされています。
目の酷使による筋肉のこわばりがある場合は、トレーニング前に温めたタオルを目にあてたり目のまわりのツボを押したりして、筋肉をほぐしておくとよいでしょう。
また、目の健康に良いとされる栄養素を豊富に含むブルーベリーや卵黄、ほうれん草などを積極的に摂るのもおすすめです。
なお、今回紹介するトレーニングは、メガネやコンタクトレンズをつけたままチャレンジしても問題ありません。遠近両用メガネを使用している方や近距離用・遠距離用のメガネを併用している方は、遠距離用のレンズでトレーニングしてください。
遠近トレーニング法は、「目のストレッチ」とも呼ばれるトレーニングです。目の筋肉を意識して伸び縮みさせることで、視力低下や目の機能の衰えを予防する効果、老眼を予防する効果などが期待できます。
1. 右手の親指を立てて「グッド」の形を作って腕を伸ばし、顔から30~40cm離れた位置に親指が来るように調節する。
2. 親指の爪に目のピントを合わせる。
3. 部屋の中で最も遠くにある物にピントを合わせる。窓の外に見える建物や電柱にピントを合わせても良い。
4. 2と3を1秒ごとに繰り返す。これを一日5分行なう。
なお、このトレーニングは5分間続けて行なう必要はありません。1回1分を5回繰り返す方法でも構いませんので、スキマ時間を使って取り組んでください。
眼球の動きをコントロールする外眼筋のストレッチができるトレーニングです。
1. 親指を立てて片腕を伸ばし、爪の位置が目と目の間の延長線上に来るようにする。腕を伸ばした状態で、1秒間親指の爪を見つめる。
2. 腕を伸ばしきった半分の位置で親指を止め、1秒間親指の爪を見つめる。
3. 親指を立てたまま目と目の間にできるだけ近づけ、1秒間寄り目で見つめる。
1セット10秒足らずでできるトレーニングなので、目の疲れが気になったらチャレンジしてみてください。
こちらも、外眼筋を動かすトレーニングです。目の疲れを和らげる効果が期待できます。
1. 両手の親指を立てて肘を曲げ、腕を肩幅ほどに広げる。自然に前を向いたときの視線の先くらいに親指が来るようにする。
2. 顔を動かさずに、立てた親指の間を左右に3往復するように視線を動かす。
3. 親指の位置を変え、上下・ななめ・逆ななめでも行なう。
4. 1回につき各3往復、一日1回行なう。
目の動きは遅くても大丈夫です。親指の爪をしっかり見て、外眼筋を意識しながら動かしましょう。
筋肉の緊張をほぐし、目のまわりの血行を良くするトレーニングです。意識的にまばたきをすることで、外眼筋や目元の表情筋、眼球全体をマッサージする効果も期待できます。
1. 左右交互に10~20回ウインクする。
2. スピードを速めて、左右交互に10~20回ウインクする。
3. まぶたを強めに閉じながら、左右交互に10~20回ウインクする。
4. 左右の目を同時に強く閉じてパッと開くまばたきを3回繰り返す。
トレーニングの刺激で適度に涙が分泌されるため、目をスッキリさせたいときにもおすすめです。
眼球を動かして、目の動きをなめらかにするトレーニングです。目の運動不足が解消されて動きが良くなるため、物を見やすくなる効果が期待できます。
1. 大きな円を描くように両眼をゆっくり動かす。右回りに2~3周、左回りに2~3周、1周につき10秒ほどかけて眼球を回す。
2. 眼球を回し終わったら、5秒間ほど寄り目をキープする。
「眼球をぐるぐる回すと気分が悪くなる」という方は、まぶたを閉じた状態で眼球を動かしても構いません。なお、トレーニング後に疲れを感じる場合は、目をゆっくり休ませてください。
視力回復トレーニングは、スマートフォンのアプリを利用して行なうこともできます。スマートフォンアプリでチャレンジできるおもなトレーニングは、眼球運動と立体視画像の2種類です。
なお、アプリを使う視力回復トレーニングは気軽に取り組めますが、規定の使用時間を超えてしまうと目に負担がかかるおそれがあります。アプリを利用する際は事前に使用手順をよく読み、目に負担がかかり過ぎないようにしましょう。
眼球運動ができるアプリにはさまざまな種類があり、画面上のターゲットを目で追って動体視力を鍛えるものや、目の焦点を合わせて眼球運動を促進するものなどがあります。
アプリを使い、目を左右だけではなく上下など普段あまり動かさない方向に動かせば、眼球の動きが活性化されるでしょう。
ゲーム感覚で眼球運動ができるアプリもあるため、楽しみながら視力回復トレーニングに取り組むことも可能です。
立体視画像(3D)を活用した視力回復アプリは、模様のようにしか見えない画像を見つめ、ピント調節をしながら平面画像の中に立体的な画像を見つけていくものです。
これらの視力回復アプリでは、目の焦点をずらすと平面画が立体画に見えるステレオグラムが用いられています。立体画を見つけようとしてステレオグラムを眺めると、目のピントを合わす際に使われる筋肉が鍛えられる ため、「アプリの利用で視力が回復した」という声も少なくありません。
ここまで、視力回復に効果が期待できるトレーニングやアプリなどを紹介してきましたが、視力が回復するかどうかは近視のタイプによって異なります。
トレーニングなどで視力回復が期待できるのは、「屈折性近視」と呼ばれるタイプです。一方、「軸性近視」と呼ばれるタイプは、トレーニングなどをしても視力回復があまり期待できません。
もっとも、屈折性近視であるか軸性近視であるかの自己判断は難しいものです。自分の近視のタイプがわからない場合は、眼科で診断を受けましょう。
「屈折性近視」は、レンズの役割を果たす水晶体がふくらんだままの状態になり、遠くが見えにくくなる近視です。長時間近くを見続けて、水晶体の厚さをコントロールする筋肉が過度に緊張して正しく働かなくなると起こります。仮性近視は、屈折性近視の一種です。
18歳以上で近視になった場合は、屈折性近視が疑われます。屈折性近視は比較的軽い近視で、視力低下は一時的にすぎません。目の筋肉の緊張を和らげると症状が改善するため、トレーニングによる視力回復が期待できます。
「軸性近視」は、眼球が前後に伸びて眼軸長(角膜から網膜までの距離)が正常より長くなり、網膜の手前でピントが合ってしまうために遠くが見えにくくなる近視です。前述しましたが、軸性近視は遺伝の影響が大きく、18歳未満で近視になった場合は軸性近視が疑われます。
眼軸長が1mmに満たないほどわずかに長くなっただけでも、目のピントが合わなくなるといわれていますが、長くなった眼軸長が短くなることはありません。そのため、トレーニングを行なっても視力が回復する可能性は低いといわれています。
公開月:2016/4
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