コンタクトレンズ装用時に涙が出て困った経験はありませんか。
実際、コンタクトレンズは目にとって異物なので、慣れるまでは涙の分泌量が増えることもあります。しかし、いつものコンタクトレンズを使っているのに涙がたくさん出るとなると、目あるいはコンタクトレンズに問題が生じている可能性が否定できません。
それでは、コンタクトレンズ装用時に涙が止まらなくなるのはどのような場合なのでしょうか。涙の役割や涙が出るときの対処法と併せて見ていきましょう。
まずは、涙の役割を知っておきましょう。涙は目の潤いを保つだけではなく、目の正常な働きに欠かせない重要な役割を担っています。
涙は油層と液層の二層で構成されています。
油層は涙の表面を覆い、水分の蒸発を防ぐのがおもな役割です。一方、液層はたんぱく質など栄養のほか、涙が目の表面に均一に広がるのを助けるムチンと呼ばれる成分も含んでいます。
また、液層に含まれる酸素や栄養を、血管を持たない角膜(黒目の部分)へ供給するほか、目にたまった老廃物(はがれ落ちた古い細胞など)を洗い流す役割もあります。
目を保護するのも涙の役割の一つです。
例えば目にゴミなどが入ると、異物を素早く洗い流すために大量の涙が分泌されます。また、涙には殺菌作用のある成分が含まれているため、雑菌の侵入や感染を防ぐのにも欠かせません。
さらに、涙には抗酸化作用のあるビタミン類や酵素、細胞の再生をサポートする栄養成分なども含まれているため、紫外線から目を守ったり傷を治したりする働きもあります。
なお、コンタクトレンズ装用時は涙がレンズの表面を覆い、まばたきをしたときの摩擦をやわらげています。
涙があると角膜の表面にある凸凹がなめらかになるため、物がはっきりと見えるようになります。そのため、適度な量の涙は快適な視力の維持にも欠かせません。
ちなみに、角膜の表面に凸凹がある不正乱視では、ハードコンタクトレンズと目の隙間を涙が満たし、凸凹をなめらかにすることで乱視を矯正します。このようなことから、涙は不正乱視をハードコンタクトレンズで矯正する際にも大変重要な役割を果たしているといえるでしょう。
では、涙が必要以上に出るのはどのようなときなのでしょうか。コンタクトレンズ装用との関係も併せて解説します。
涙が出る原因として多いのは、目に異物が侵入した場合です。もともと涙には目に侵入した異物を洗い流す働きがあり、ゴミやホコリ、まつ毛などが目に入ると大量の涙が分泌されます。
しかし、まぶたの裏に貼り付いた場合は上まぶたを裏返して異物を取り除かなければなりません。このような場合は、目やまぶたを傷付けないためにもすみやかに眼科を受診して異物を取り除いてもらってください。
コンタクトレンズ装用中に目に異物が侵入した場合は、涙が出るだけでなく異物感や痛みを覚えることが少なくありません。とりわけ、ハードコンタクトレンズ装用中は異物が目の中に入ると激しい痛みを感じるため、異物の侵入にすぐ気付くことができます。
結膜とは、まぶたの裏側から白目の表面を覆っている薄い膜のことです。この結膜に炎症があるときも、涙が出やすくなります。よく知られているのが、花粉症やハウスダストなどによるアレルギー性結膜炎です。
コンタクトレンズユーザーの場合、コンタクトレンズによる物理的な刺激で結膜炎になることもあります。また、コンタクトレンズに付着した汚れでアレルギー性結膜炎を発症するケースもあります。2ウィークタイプやマンスリータイプなどデイリーケアが必要なコンタクトレンズは、正しく洗浄しないと汚れが蓄積しやすいため、より一層注意しなければなりません。
なお、通年性のアレルギーや花粉症がある場合は、アレルギー症状にともなう分泌物の増加でコンタクトレンズが汚れやすくなるため、さらに症状が悪化しやすくなります。
角膜の傷や感染症が原因で、涙が出ることもあります。
角膜に傷ができる原因はさまざまです。例えば、目を強くこすったり目に何かが当たったりすると、角膜に傷が付くことがあります。また、パソコンなどの長時間使用で目が乾燥し、角膜が傷付くこともあります。
角膜が傷付くと雑菌が侵入して感染症をまねくこともあるため、大変危険です。
コンタクトレンズ装用にともなう摩擦や酸素不足が原因で、角膜に障害が生じることもあります。特にコンタクトレンズを装用したまま寝てしまうと、目に大きな負担がかかって角膜障害のリスクが高まるため、絶対に避けなければなりません。
角膜障害は、放置すると症状がさらに悪化したり視力が低下したりするおそれがあるほか、手術が必要になることもあります。そのため、異常に気付いたらできるだけ早く眼科を受診しましょう。
目の表面の乾燥がきっかけとなり、涙が止まらなくなることもあります。イメージがわかない場合は、乾燥した風の強い冬の日に、向かい風のなかを歩くことを想像してみてください。風に向かって歩き、知らず知らずのうちに涙が出てきた経験をしたことがある方も多いと思います。
これと同じように、エアコンによる空気の乾燥やドライアイが原因で涙が出てくることもあるのです。
とりわけ、コンタクトレンズ装用時は目の表面を覆う涙の量が少なくなり、ソフトコンタクトレンズの場合はレンズに涙が吸収されるため、目の乾燥をまねきやすくなります。また、パソコンなどを長時間使用する際はまばたきの回数が減って目が乾きやすくなるため、いつも以上に注意が必要です。
コンタクトレンズ装用時に涙が出る場合は、コンタクトレンズ自体に問題がある可能性も考えなければなりません。
実際、コンタクトレンズの洗浄が不十分で汚れが残っていると、雑菌の侵入や感染に対する防御反応で涙が止まらなくなることがあります。コンタクトレンズに残っている汚れがアレルギー症状を引き起こし、涙が出ることもあるでしょう。
また、コンタクトレンズが目に合っていない場合も涙が出る可能性があります。実際、コンタクトレンズの度数が合っていないと体調に悪影響がおよび、涙の分泌量が増えることがあります。
BC(ベースカーブ:レンズの曲がり具合)が合っていない場合も、注意が必要です。BCの合わないコンタクトレンズを使用すると、目が乾きやすくなったり角膜に傷が付いたりして涙が止まらなくなるおそれがあります。
ここからは、コンタクトレンズ装用時に涙が出て困るときの対処法を解説します。
コンタクトレンズ装用中にゴミなどの異物が侵入して涙が止まらなくなった場合は、まずコンタクトレンズを外して目を水で洗い流してください。このとき、指で眼球にふれたりゴシゴシこすったりするのはNGです。目に傷が付くおそれがあるため、絶対にやめてください。
目をきれいに洗い流したら、次はコンタクトレンズを洗浄しましょう。ただし、ワンデータイプのコンタクトレンズは一度外したら再装用できません。すぐに廃棄して、新しいものと交換してください。
目を洗い流して清潔なコンタクトレンズを装用しても涙が出る場合は、目やレンズに傷が付いているおそれがあります。このような場合は、コンタクトレンズを外してすぐに眼科を受診しましょう。
コンタクトレンズの使用方法やケア方法が間違っていると、装用時に涙が出るおそれがあります。したがって、コンタクトレンズを正しく取り扱うことも大切です。
実際、コンタクトレンズの長時間装用は目に大きな負担がかかります。装用時間をきちんと守り、涙の出過ぎを予防しましょう。
また、コンタクトレンズの使用期間や使用期限も必ず守ってください。使用期間や使用期限を過ぎたコンタクトレンズを使用すると、目のトラブルで涙が止まらなくなるおそれがあります。
そして、ワンデータイプ以外のコンタクトレンズは、使用後にしっかり洗浄するのも忘れないでください。デイリーケアが面倒な場合やしっかり洗浄する自信がない場合は、ワンデータイプへの変更を考えてみましょう。
コンタクトレンズ装用時の涙の出過ぎを防ぐためには、目の乾燥を避けることも重要です。
パソコンやスマートフォンの長時間使用、空気の乾燥、コンタクトレンズの長時間装用などは、いずれも目の乾燥の原因になります。仕事や職場などの関係で環境改善が難しい場合は、コンタクトレンズ用の目薬を使用したり、まばたきの回数を意識的に増やしたりして、目の乾燥を防ぎましょう。
涙の出る状態が続く場合や、充血・痛みなど涙以外の症状がある場合は、目に傷が付いていたり感染症に罹患していたりするおそれがあります。そのため、できるだけ早く眼科を受診して、適切な治療を受けるようにしましょう。
眼科を受診すれば、目の健康状態に応じたコンタクトレンズを処方してもらうことも可能です。度数の変化にも対応してもらえるため、目にかかる負担を減らすことにもつながります。
涙は、目の健康維持に欠かせない重要な役割を担っています。しかし、涙が止まらない場合、あるいは涙の量が多すぎる場合は、目に傷ができていたり、感染症などのトラブルが起きていたりする可能性を考えなければいけません。また、コンタクトレンズ装用時に涙が多く出る場合は、原因に応じた対応が必要です。
もっとも、コンタクトレンズ装用時の目のトラブルは、コンタクトレンズを正しく取り扱い、眼科を定期受診すれば予防できる場合が少なくありません。眼科を定期受診すれば、度数の変化や目の異常にも素早く対応してもらえます。また、使い方やケア方法に関するアドバイスも受けられるでしょう。
涙が出るなどのトラブルを予防するためにも、3ヵ月に1回は眼科を受診して目に合うコンタクトレンズを処方してもらうことをおすすめします。
公開日:2023/11/6