目に合うコンタクトレンズを選ぶには、度数だけではなくさまざまなレンズデータを正確に把握しておかなければなりません。
レンズデータのなかで、特にコンタクトレンズのフィット感に大きく影響するのが「BC(ベースカーブ)」です。正しいBCを知らないままインターネット通販などで適当に選んだコンタクトレンズを使用すると、目に違和感を覚えたり、頭痛や吐き気などが生じたりすることもあります。
そこで今回は、BCの意味と正しいBCを知る方法、BCが合わない場合に生じうるトラブルや目に合っていないときのサインなどについて解説します。BCの誤差の許容範囲も解説しますので、BCが一致するコンタクトレンズがなくて困っている方は、ぜひ参考にしてください。
BCとは「Base Curve(ベースカーブ)」の略語で、コンタクトレンズの曲がり具合を数値にしたものです。通常はミリメートル(mm)で表記され、数値が大きいほどカーブは緩やかになり、小さいほど曲がり具合がきつくなります。
例:BCが8.6のコンタクトレンズの場合
レンズ内側(瞳に接する側)の曲がり具合が、半径8.6mmの円のカーブと同じ。
コンタクトレンズのBCが瞳のカーブに合っていないと、レンズがずれたり貼り付いたりしやすくなるほか、痛みを感じることもあります。そのため、コンタクトレンズを購入する際には、正しいBCを知っておくことがとても大切です。
それでは、正しいBCを知るにはどうすればよいのでしょうか。ここでは、BCを知る方法や数値の確認方法、BCの誤差がどの程度まで許容されるか、などを紹介します。
BCを自分で測定することはできません。正しいBCを知るには、眼科受診が必要です。
眼科では、必ずコンタクトレンズを処方する前に「角膜曲率半径」を測ります。角膜曲率半径とは、角膜(黒目の部分)の形状(カーブ)を数値化したものです。日本人の場合、平均的な角膜曲率半径は7.5~8.23mm程度といわれています。
ご自身のBCがわからない方、あるいは測定したことがない方は、眼科で適切な検査を受けて正確な数値を把握しましょう。
ただし、BCだけでは目に合うコンタクトレンズは選べません。
なぜなら、コンタクトレンズはメーカーや商品が変わると、レンズの厚さや軟らかさ、装用感なども変わるからです。特に、ハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズは素材も形状も大きく異なるため、BCの数値も変わります。
そのため、現在使用しているコンタクトレンズのBCがわかっている場合でも、レンズを変える際には眼科で再度検査を受けることをおすすめします。
なお、平均的な日本人のBCは8.6~8.7mmといわれています。もちろん、これはあくまで平均値にすぎません。多くのソフトコンタクトレンズメーカーは、日本人の平均値に合わせてBCが8.3~8.9mmのレンズを製造・販売していますが、取り扱いが多いのは8.6mm、または8.7mmのものです。
コンタクトレンズのBCは、外箱やレンズが入っているブリスターケースに記載されています。お手もとにパッケージがある場合は、一度確認してみてください。
一般的なソフトコンタクトレンズの場合、BCは2~3種類から選べます。カラコン(カラーコンタクトレンズ)も基本的には一般的なコンタクトレンズと同じで、BCが8.6~8.7mmのレンズが主流です。
しかし最近は、一般的なソフトコンタクトレンズもカラコンも、ワンサイズのみの商品が少なくありません。「選択肢が1つだけなら、眼科受診はしなくてもよいのでは?」と考える方もいるかもしれませんが、BCが目にフィットしているかどうかを判断するためには、やはり眼科での診察が必要です。
特に初めてコンタクトレンズを使う場合は、目の健康状態をチェックしてもらうためにも必ず眼科で検査を受けてください。レンズ変更の場合も、正確なBCを把握するために検査が必要です。カラコンを購入する際も眼科を受診して、目に合うものを選ぶようにしましょう。
BCの誤差は、どの程度まで許容されるのでしょうか。
硬い素材で作られているハードコンタクトレンズは、BCがわずかに合わないだけでも装用感が大きく変わります。したがって、できる限り誤差のないレンズを選ぶのが望ましいでしょう。ハードコンタクトレンズは角膜の形状と合うように0.05㎜刻みでBCが設定されていることが多いため、眼科を受診すれば目に合う適切なレンズを処方してもらえます。
一方、ソフトコンタクトレンズはしなやかで軟らかく、目にフィットしやすいため、個人差はありますが、±0.2mm程度の誤差であればそれほど違和感なく装用できるでしょう。ただし、誤差が0.5mm以上になると装用時に違和感を覚えることがあるため、誤差が大きすぎるものは避けたほうがよいでしょう。
なお、BCの誤差が±0.2mm以内でも、目に違和感や不快感が生じる可能性は否定できません。気になる症状がある場合は装用をやめて、眼科で別のレンズを処方してもらいましょう。
コンタクトレンズのBCが目に合っていないと、目だけではなく体調にも影響することがあります。どのような症状が起こりうるのか、詳しく見ていきましょう。
自分の目の丸みよりもカーブがきついBCの小さなレンズを選ぶと、瞳が圧迫されて目の血管が膨らみ、充血してしまいます。充血は眼病のもとになるので、合わない場合はすぐに装用を中止しましょう。
こちらも、BCが小さいときに起こりやすいトラブルです。
目のゴロゴロ感などは、コンタクトレンズの縁が目に当たることで生じるといわれています。不快な症状が続く場合は、眼科を受診してBCを測ってもらいましょう。
コンタクトレンズは目に密着しているわけではなく、目の表面を覆う涙の層の上に浮いた状態になっています。しかし、BCが小さいとレンズの縁が目に当たりやすくなり、涙の通り道をふさいでしまうことになりかねません。
涙の流れが妨げられると、目が乾きやすくなります。このようなことが原因で、ドライアイになる方も少なくありません。
目のかゆみは、BCが大きすぎるときに起きやすいトラブルです。
BCが大きすぎるとコンタクトレンズの位置が安定せず、ずれによって目のかゆみが生じやすくなります。さらに、何度も目をこすると角膜が傷つくリスクが高まり、目やにもたくさん出るようになるため、気をつけましょう。
コンタクトレンズのBCが合っていないと、目の疲れや血流不良で眼精疲労をまねくことがあります。
眼精疲労になると、目の痛みやかすみ目、目の充血、頭痛や肩こり、吐き気などが生じることがあります。これらの症状は休息や睡眠をとっても回復が難しく、特効薬も存在しません。
コンタクトレンズの使用で体調が悪くなる場合は早めに眼科を受診して、BCなどのレンズデータが正しいかどうかをチェックしてもらいましょう。
最後に、BCが合わない場合に生じやすい「サイン」を、コンタクトレンズのタイプ別に解説します。
ソフトコンタクトレンズは軟らかく目にフィットしやすいため、BCの値が多少ずれていても装用は可能です。
しかし、以下のような場合はBCが小さすぎる可能性があります。
レンズが目に貼り付く
目に締め付け感がある
目が充血する
ゴロゴロ感などの違和感がある
目の乾きが気になる
このような症状があると、角膜を傷つけてしまうことがあるため大変危険です。
だからといって、BCが大きいレンズも好ましくありません。以下のような不調を感じる場合は、BCが大きすぎることが考えられます。
レンズの位置が安定しない
レンズがずれやすい
目にかゆみがある
かゆみを抑えるために目をこすると、角膜が傷ついたり結膜炎になったりする場合があるため、こちらも注意が必要です。
ハードコンタクトレンズは硬い素材で作られているため、ソフトコンタクトレンズ以上にBCの値が重要です。特に、以下のような場合は、レンズのBCが合っていない可能性があるため、注意しなければなりません。
レンズがすぐにずれる・はずれる
レンズを装用すると違和感や痛みがある
BCが合っていないと、上記のような不調を感じるだけでなく目を傷つけてしまうこともあります。症状がひどくなる前に、眼科で検査を受けるようにしてください。
カラコンはソフトコンタクトレンズに分類されるため、BCが合っていないサインはソフトコンタクトレンズの場合と同様です。ただし、以下のようなカラコン特有のサインがあります。
レンズの色素が角膜にかぶってしまい、視界が悪くなる
なお、カラコンは直径が大きいものも多く、商品によってはBCが合っていても違和感やずれが気になることがあります。痛みを感じるなどの異常がある場合は使用をやめて、早急に眼科を受診しましょう。
コンタクトレンズのBC(ベースカーブ)とは、レンズの曲がり具合を数値で表したものです。BCの合っていないコンタクトレンズを装用すると、目に違和感や痛みを覚えたり、角膜に傷がついたりするだけではなく、頭痛や吐き気などの症状が表れることもあります。
コンタクトレンズを選ぶ際には、度数や使用期間に気を取られがちですが、BCを合わせることも重要です。しかし、BCは自分で測れるものではありません。BCの値がわからない方・BCが合っていない「サイン」に心当たりがある方は、この機会に眼科で検査を受けて正しいBCを知っておきましょう。
更新日:2024/11/10