ソフトコンタクトレンズの装用時に、意外に悩むのがレンズの裏表です。実際、薄くてしなやかなソフトコンタクトレンズは、簡単に反転してしまいます。なかには、レンズが裏返しになっていることに気付かず、そのまま装用した経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、間違えたままコンタクトレンズの裏表を装用すると、目のトラブルをまねくおそれがあります。また、コンタクトレンズの裏表を確認する際には、いくつかの点に注意しなければなりません。
今回は、コンタクトレンズの裏表がわからなくなった場合に備えて、見分け方のポイントを解説します。コンタクトレンズを裏返しで装用した場合に起こりうる症状や、裏表が正しいのに違和感がある場合の理由なども紹介しますので、目のトラブル予防に役立ててください。
ソフトコンタクトレンズは大変やわらかいため、常に正常なフォルムで保存液に浸っているとは限りません。したがって、コンタクトレンズを正しく装用するためには、裏表をしっかり見分けることがとても重要です。
コンタクトレンズの裏と表を見分ける方法はいくつかありますが、ここでは簡単で判別しやすい3つの方法を紹介します。
コンタクトレンズの裏表の見分け方としてよく知られているのが、コンタクトレンズを指先にのせて縁の形状をチェックする方法です。
コンタクトレンズのカーブを下側にして、清潔にした指先にのせたとき、真横から見て全体的にきれいなお椀型になっていれば反転していません。反対に、不自然なカーブになって縁の部分が外側に反っている場合は、コンタクトレンズが裏返った状態になっています。
ただし、この方法では見分けがつきにくい製品もあるため、ほかの方法もいくつか知っておくとよいでしょう。
製品によっては、コンタクトレンズの裏表が簡単に判別できるように、数字や文字が印字されていることがあります。
コンタクトレンズを指先にのせて、数字や文字が正しく読める場合はきちんと表向きになっているので問題ありません。数字や文字が反転している場合は、コンタクトレンズが裏返しになっています。
ただし、識別マークの見方は製品により異なります。取扱説明書などをよく読み、コンタクトレンズの外側から見るのか内側から見るのかを確認したうえで、裏表を判断しましょう。
コンタクトレンズをつまんで軽く力を加え、裏表を判断する方法もあります。
コンタクトレンズの両端の部分に親指と人差し指を添え、軽くつまんだときに内側へ自然に丸くなじむ感じがある場合は、正しく表側になっています。一方、外側へ不自然に反発する感じがある場合は、コンタクトレンズが裏側になっていると考えてください。
ただし、この方法を試すときは、爪でコンタクトレンズを傷付けたり、強く折り曲げてコンタクトレンズを破ったりしないよう注意が必要です。
コンタクトレンズの裏と表を確認する際には、清潔を心がけて破損にも気を付けなければなりません。目のトラブルを予防するためにも、以下の点には特に注意してください。
コンタクトレンズの裏と表を確認する前に、必ず石けんなどで手を洗ってください。水分はペーパータオルや清潔なタオルなどで拭き取っておきましょう。
手に汚れや水分が残っていると、雑菌などがコンタクトレンズに付着して感染症を引き起こすおそれがあります。外出先でやむを得ず裏表を確認する場合も、手を洗って水分を拭き取ってからコンタクトレンズに触れてください。
コンタクトレンズの裏表を確認するために指でつまむときは、爪を立てないよう注意してください。
コンタクトレンズは大変薄くデリケートな素材で作られているため、爪を立てると傷が付いたり破れたりすることがあります。
また、コンタクトレンズに力を加えて裏表を確認する場合は、強い力で折り曲げないでください。力をかけすぎると、コンタクトレンズの破損につながることがあります。
なお、傷や破れがあるコンタクトレンズを装用すると、目のトラブルをまねくおそれがあります。裏表を確認している最中に誤ってコンタクトレンズを傷付けてしまった場合は、装用期間が残っていても必ず廃棄しましょう。
裏表の確認のためにコンタクトレンズを外した場合は、再装用する前に必ず洗浄してください。
一度外したコンタクトレンズは、雑菌などで汚染されているおそれがあります。そのため、専用のケア用品できちんと洗浄してから装用しないと、眼病などの原因になることがあります。
外出先でコンタクトレンズの裏表を確認したくなる場合があるかもしれないので、洗浄液や予備のコンタクトレンズ、保管用のレンズケースは常に携帯しましょう。
ワンデータイプのコンタクトレンズは、一旦レンズを外してしまうと再度装用できません。そのため、裏と表を間違えて装用した場合は、付け直しをせず、必ず廃棄してください。
ワンデータイプのコンタクトレンズを常用している場合は、万が一に備えて予備のコンタクトレンズを少し多めに用意しておき、外出時にはいくつか持ち歩きましょう。予備のコンタクトレンズを持っていれば、実際に裏表を逆にして装用してしまった場合でも外して新しいレンズに替えられます。
それでは、コンタクトレンズの裏と表を間違えて装用すると、目や見え方にどのような影響があるのでしょうか。生じうる症状とその理由を知っておきましょう。
コンタクトレンズは、角膜のカーブにフィットするよう繊細なデザインに設計されています。そのため、コンタクトレンズが反転した状態で装用すると、カーブが目にうまくフィットしなくなるため、痛みやゴロゴロ感などの違和感が生じやすくなります。
また、目の形状とコンタクトレンズのカーブが合わないことから、ずれたり外れたりする場合も少なくありません。特にワンデータイプは一度外れると再装用できないため、コンタクトレンズを無駄に消費するリスクも高まります。
コンタクトレンズを裏返しの状態で装用すると、見え方にも影響が生じます。
コンタクトレンズは、度が入っているのはレンズの中心部分であるため、裏返しで装用してもまったく見えないわけではありません。しかし、見え方が通常と比べてとても悪くなるため、ほとんどの方は気が付くでしょう。
また、コンタクトレンズが裏返っていると目からずれやすくなるため、物がぼやけて見えづらくなることもあります。
ただし、もともと視力が悪い人は見え方の変化に気付かないこともあるため、注意が必要です。
裏表を間違えたままでコンタクトレンズの装用を続けると、目に傷が付いたり、見え方の違和感から気分が悪くなったりすることがあります。
目に傷が付くと、炎症や感染症などの目のトラブルをまねくことにもなりかねません。目の充血や目やにの増加、痛みなどは目にトラブルが生じているサインです。症状が悪化すると視力に障害が残ることもあるため、「コンタクトレンズの裏表が間違っているかも……」と思ったら、すぐにコンタクトレンズを外してください。
コンタクトレンズの裏表が正しいにもかかわらず、目や見え方に違和感が生じる場合は、目や使っているコンタクトレンズ自体に問題があることが考えられます。ここでは、違和感のおもな原因とその対策を併せて見ていきましょう。
目が乾燥していると、コンタクトレンズを正しく装用していても異物感や痛みが生じやすくなります。
目が乾燥する原因は、まばたきの減少や空気の乾燥、涙不足などです。心当たりがある場合は、意識してまばたきの回数を増やしたり人工涙液をさしたりして、目を潤すようにしましょう。
また、ソフトコンタクトレンズは長時間装用すると目の乾きをまねきやすいため、装用時間を短くするのもおすすめです。シリコーンハイドロゲル素材のレンズや目が乾きにくい低含水レンズに変更するのも、選択肢の一つでしょう。
度数やBC(ベースカーブ:レンズの曲がり具合を表す数値)などが合っていないコンタクトレンズの装用も、違和感の原因になります。
コンタクトレンズの度数が合っていないと、見え方に違和感が生じることがあります。無理に使い続けると、疲れ目や頭痛・肩こりなどの原因にもなるため、注意が必要です。
また、BCが合っていないと、レンズが目にうまくフィットしません。結果として、目が痛くなったりコンタクトレンズがずれたりするなどして違和感が生じやすくなります。
そのほか、DIA(レンズ直径)が合っていないと、レンズが動いたり目の酸素不足をまねいたりすることがあるため、違和感を覚えることがあります。
目に合う度数や正確なBCなどは、眼科を受診しなければ測定できません。また、目の健康状態や度数は変化するものです。コンタクトレンズを快適に使い続けるためにも、眼科を定期受診して目の状態に応じたレンズを処方してもらうようにしましょう。
コンタクトレンズの汚れや傷、変形なども、レンズ装用にともなう違和感の原因となります。
ケア方法が不適切だと、コンタクトレンズに汚れが残ったり傷が付いたりします。こすり洗いやタンパク除去をしても汚れが落ちない場合、あるいは傷・破れなどがある場合は、使用期間内であっても廃棄して新しいレンズに交換してください。
また、レンズを保管する際の保存液の量が少なかったり、レンズを水道水などに浸したりすると、レンズが変形することがあります。コンタクトレンズを装用したままプールで泳ぐ・入浴するなどの行為もレンズの変形をまねくことがあるため、注意が必要です。
変形したコンタクトレンズは、すぐに廃棄してください。装用を続けると、違和感だけにとどまらず、目やまぶたにトラブルが生じるおそれがあります。
コンタクトレンズの裏表を間違えて装用すると、目や見え方に違和感が生じるだけではなく、目に傷が付いて眼障害をまねくおそれがあります。コンタクトレンズを装用する際は今回紹介した方法で裏表を確認し、注意点を守りながら正しく装用しましょう。なお、コンタクトレンズを正しく装用しても違和感が続く場合は、速やかに眼科を受診してください。
最近は、裏表を確認する必要がないコンタクトレンズも販売されています。このタイプのコンタクトレンズは、目に触れる面が下向きにセットされた状態になっているため、レンズの内面に触れることなく清潔に装用できます。商品数は限られますが、コンタクトレンズの裏表を見分けるのが苦手な方は、選択肢の一つとして考えてみてもよいかもしれません。