「視力検査を受けたら、左右の視力に差があった」という経験はありませんか。実際、左右の視力がまったく同じ方はほとんどいません。
しかし、左右の視力が極端に違う状態を放置すると、左右の視力差がさらに大きくなることがあります。また、病気が原因で左右の視力が違う場合、放置すると失明するリスクもあるため、早急に何らかの対処をしなければなりません。
それでは、片目だけ視力が悪いことに気付いたらどうすればよいのでしょうか。今回は、片目だけ視力が悪い場合に起こりやすい症状と片目だけ視力が落ちるおもな原因、左右の視力差を改善するための対処法を紹介します。
人間は両目で物を見ています。そのため、片目だけ視力が悪くても無意識のうちによく見えるほうの目で見づらさを補ってしまい、視力差があることに気付かないことがあります。
次のような症状がある場合は、片目だけ視力が悪くなっている可能性があります。
片目を閉じた際の見え方が、両目での見え方よりも見えにくい
対象物が二重・三重に見える
物の距離感や立体感をつかみにくい
目が疲れやすい
片目だけ視力が悪いと、物がうまく見えないだけでなく、日々の倦怠感や体調不良につながるおそれもあります。また、片目だけ視力が悪い状態を放置すると視力差がさらに大きくなるリスクもあるため、注意が必要です。
人間が物を立体的に見たり遠近感をつかんだりできるのは、対象物を左右の目で見ているからです。しかし、左右の視力に大きな差があると、無意識のうちに視力の良いほうの目だけで物を見るようになるため、立体感や遠近感をうまくつかめません。
このような見え方の不自由さは、左右の視力に差があるほど大きくなるといわれています。
視力の左右差が大きくなると、左右の網膜にうつる「像」の大きさにも差が出てきます。網膜にうつる像の大きさが左右で異なると、脳が情報をうまく処理できず、そのストレスを疲労として感じることもあるのです。
さらに疲労が続くと、めまいや頭痛、肩こりや吐き気などの体調不良をまねくこともあります。
人間は左右の視力の差が大きいと、視力の良いほうの目で遠くを見て、視力の悪いほうの目で近くを見るようになります。これは、片目で対象物を見るほうがピントを合わせやすいからです。
しかし、視力の悪いほうの目は常に近くを見ることになるため、近視がどんどん進みます。一方、視力の良いほうの目は遠くを見る機会が増えるため、近視にはなりません。
つまり、片目だけ視力が悪い状態を放置すると、左右の視力差がさらに大きくなるおそれがあります。
左右の視力差は、生活習慣や普段何気なくやっている癖が原因で生じている場合があります。また、ストレスや遺伝的な要素、目の病気などが関係している場合も少なくありません。
原因によっては失明につながることもあるため、片目だけ視力が悪いことに気が付いた場合は、早めに眼科を受診しましょう。
日頃、寝転んで本やタブレットを見ていたり、字を書くときなどに姿勢が悪かったりすると、片目だけ視力が悪くなることがあります。
これは、対象物までの距離が左目と右目で違うためです。心当たりがある場合は、左右の目と対象物までの距離をできるだけそろえるようにしてください。
まず、寝転んでタブレットや本、スマートフォンを見るのはやめましょう。テレビも寝転んで見るのではなく、離れて正面から見る習慣をつけることが大切です。
また、鉛筆などの筆記具は、文字を書いている先端が見えるように持ってください。書いた文字が指で隠れてしまうと、顔を左右どちらかに傾けて手もとを見ることになるため、目と対象物までの距離が左右で変わってしまいます。
本やノートは机の中心に置くと、左右の目からの距離がそろいやすくなります。
ストレスが原因で片目の視力が低下することもありますが、ストレスによる視力低下は一過性であるケースがほとんどです。この場合、原因となっているストレスがなくなれば数日で視力は戻るといわれており、症状が一時的であればそれほど心配はありません。
また、片目だけを使い過ぎた結果、左右に視力差があらわれることもあります。例えば、ベッドなどに横になり、片目だけでスマートフォンを見続けた場合などです。このような場合は、目のピント調節をする筋肉が片側だけうまく機能しなくなってしまうため、一時的に片目の視力が低下することがあります。
左右の視力差が一時的なものではない場合は、目の大きさや形に左右で差があることが原因かもしれません。
目に取り込まれた光は、角膜と水晶体を通って屈折し、網膜に像を映し出します。しかし、成長による変化や遺伝的な理由で左右の目の大きさや形に差異が生じると、見え方にも違いが生じます。
特に近視は遺伝の影響が大きいため、両親のどちらかが片目だけ視力が悪いと、子どもの視力も片目だけ悪くなることがあるようです。
片目だけ視力が悪い場合に、特に注意しなければならないのが目の病気です。片目だけ視力が悪くなる場合に考えられる目の病気としては、以下のようなものが挙げられます。
眼底にある網膜がはがれてくる病気。放置すると失明することもある。
症状は、視力低下、飛蚊症(黒い虫のようなものが視界のなかで動いて見える症状)、視野の欠けなど。
虹彩(瞳孔の大きさを調節する組織)、毛様体(水晶体の厚みを調節する組織)、脈絡膜(網膜に栄養を届ける組織)に炎症が起きる病気。失明に至ることもある。
症状は、視力低下、目の痛みや赤み、目のかすみ、物がゆがんで見えるなど。
視神経が障害されて視野が欠ける病気。治療が遅れると失明することもある。
症状は、急激な視力低下、視野の欠け、目の痛み、頭痛、吐き気など。
水晶体が白く濁って視力が低下する病気。アトピー性皮膚炎や外傷、紫外線などが原因になる場合もある。放置すると失明するリスクも否定できない。
症状は、視力低下、物がぼやけて見える、視界がかすむ、まぶしさを感じるなど。
このように、片目だけ視力が低下する病気は多数あります。治療しないと失明に至る病気もあるため、気になる症状がある方は早めに眼科を受診しましょう。
片目だけ視力が悪い原因が病気にある場合は、病気の治療が最優先です。失明を防ぐためにも、必ず治療を受けてください。
一方、病気が原因でない場合は、視力矯正で対処することになるでしょう。左右の視力に差が出やすい行動をしている方は、日常生活の見直しにも取り組んでください。
ここからは、片目だけ視力が悪い場合に検討したい視力矯正方法をいくつか紹介します。
左右の視力にそれほど大きい差がない方は、メガネで見え方を調節できます。
しかし、片目だけ視力が極端に悪い場合には、左右のレンズの厚さを大きく変えなければなりません。
メガネのレンズは目から離れているため、メガネを通った光が目に届くまでに像が縮小、あるいは拡大されます。すると、左右の網膜にうつる像の大きさが著しく異なり、メガネをかけても納得のいく視力矯正にならないかもしれません。
そのため、左右の視力の差が大きい場合は、片目だけ視力矯正ができる別の方法を考えるべきでしょう。
左右の視力が極端に異なる場合には、視力の悪いほうの目だけコンタクトレンズを使うのも方法の一つです。
メガネと違ってコンタクトレンズは目に直接装用するため、像が縮小・拡大されることがなく、見え方に左右差が起きることもほとんどありません。また、コンタクトレンズはメガネと異なり、片目だけでも使用可能です。
したがって、左右の視力の差があまりにも大きく、メガネではうまく矯正できない場合は、片目だけコンタクトレンズを使用することも考えてみましょう。
「メガネやコンタクトレンズを使わず、裸眼で過ごしたい」という場合は、レーシックやICL(眼内コンタクトレンズ)も選択肢になるかもしれません。
レーシックは、レーザーを角膜に照射して形状を整え、視力を矯正する手術です。ただし、1度レーシック手術を受けると、角膜は元の状態に戻せません。また、強度の近視の場合や角膜が薄い場合は、手術を受けられないこともあります。
ICLは、目の中に人工の小さなレンズを入れる手術です。レンズを取り出すと元の状態に戻すことが可能で、強度の近視や遠視でも手術できる場合があります。
しかし、レーシックもICLも保険が適用されない自由診療なので、それなりの費用が必要です。また、手術である以上、合併症や感染症などのリスクがあることは否定できません。
レーシックやICLを希望する場合は、主治医からきちんと説明を受け、メリットだけではなくデメリットも理解したうえで、手術を受けるかどうかを決めてください。
「手術は受けたくないが、できるだけ裸眼で過ごしたい」という場合は、オルソケラトロジーによる視力矯正も考えてみましょう。
オルソケラトロジーは、寝ている間に特殊なハードコンタクトレンズを装用して、近視を改善したり進行を予防したりする治療です。ただし、オルソケラトロジーで矯正できる近視の範囲は限定されています。強度近視や乱視に対しては十分な効果が期待できない場合もあるため、過信は禁物です。
なお、オルソケラトロジーも自由診療です。また、レーシックやICLとは違って継続的な受診が必要なうえに、レンズケアもしなければなりません。そのため、時間に比較的余裕のある方向けの治療といえます。
今回は、片目だけ視力が悪い場合にあらわれやすい症状と視力差が生じる原因、左右の視力差を改善する方法を解説しました。
左右の視力に差が出る原因は、生活習慣や日頃の癖などに潜んでいることもあります。このほかには、目の使い過ぎやストレス、成長にともなう変化や遺伝の影響、病気などが原因で片目の視力が悪くなることも考えられるでしょう。特に、病気が原因の場合は失明のリスクもあるため、早急に治療しなければなりません。
病気以外の原因で左右の視力に差があるなら、手術やオルソケラトロジーなどさまざまな方法が視力矯正の選択肢になりますが、おすすめはコンタクトレンズです。
コンタクトレンズなら、メガネと違って片目の視力が極端に悪い場合でも矯正可能で、手術にともなうリスクもありません。また、コンタクトレンズを処方してもらう際の診察には保険が適用されるため、経済的な負担も抑えられます。
片目だけ視力が悪いことに気が付いたら、早めに眼科を受診し、症状に応じて目に合うコンタクトレンズを処方してもらいましょう。