コンタクトレンズには、メガネと同じように「度数」があります。しかし、近視に加えて乱視や老眼があると複数の度数が必要になるため、自分が使っているレンズの度数を正確に把握している方はあまり多くないかもしれません。
コンタクトレンズのパッケージには、度数以外の記号や数値が多数記載されています。そのため、どれが度数を表しているのかわからず、混乱する方もいることでしょう。
コンタクトレンズは度数がほんの少し変わるだけで見え方が大きく変わるため、正しい度数を知っておくことはとても大切です。
そこで今回は、コンタクトレンズの度数をはじめとした数値・記号の意味と確認方法、度数を正しく選ぶためにコンタクトレンズユーザーが知っておくべきことを解説します。
コンタクトレンズの度数とは、視力の矯正において必要なレンズの屈折力を数値で表したものです。
「見え方」に関する数値であるため、視力と混同されることがありますが、視力と度数はまったく別のものです。したがって、視力がわかっていてもコンタクトレンズの度数は判断できません。
また、目の状態によっては、近視や遠視の度数、乱視の強さを表す「乱視度数」、遠近両用レンズで欠かせない「加入度数」など、複数の度数について意識する必要があります。
コンタクトレンズの度数は、眼科で発行される処方箋やコンタクトレンズのパッケージを見れば確認できます。
眼科で検査・診察を受けて処方箋を発行してもらえば、コンタクトレンズの度数が確認できます。ただし、医療機関によって度数に関する略語が異なることもあるため、注意が必要です。
処方箋には、患者さんの氏名や処方箋発行日、有効期間、製品名などが記載されています。度数の確認で大切なのは、「規格」の部分です。
規格には、近視・遠視の度数である「球面度数」、乱視の度数である「円柱度数」、遠用の度数と近用の度数の差を表す「加入度数」などが記されています。これらのほかに、レンズ直径なども記載されているため、混同しないようにしましょう。
コンタクトレンズが手もとにある場合は、外箱や個包装(ブリスターケース)に記載されている内容で度数を確認できます。
度数を表す略語はメーカーによって多少異なるため、間違えないように気をつけながら数値を確認しましょう。
処方箋やコンタクトレンズのパッケージに記載されている度数は、略語で表記されている場合がほとんどです。略語は医療機関やメーカーによって異なりますが、ここでは代表的な表記方法と数値の見方を解説します。
近視・遠視度数とは、「球面度数」のことで、一般的なコンタクトレンズの度数を指します。「POWER」「PWR」「P」「D」「SPH」「S」のいずれかの記号で表記されることが多いです。
近視用のコンタクトレンズの球面度数はマイナス(-)、遠視用はプラス(+)で表され、度数が「0.00」あるいは「±0.00」となっているものは度数が入っていません。数値が大きくなるほど、近視や遠視の矯正力は強くなります。
乱視度数は「円柱度数」とも呼ばれる数値で、角膜と水晶体がどれくらい歪んでいるかを示します。「CYL」は、「Cylindrical(シリンドリカル)」の略語です。
乱視度数はマイナス(-)で表示され、矯正力は数値が大きくなるほど強まります。ただし、弱い乱視は近視用・遠視用のコンタクトレンズを装用するとある程度補正されるため、一般的に「-0.75」より乱視度数の弱いレンズは販売されていません。
加入度数は、遠近両用コンタクトレンズを購入する際に確認すべき数値であり、遠くを見るための度数と近くを見るための度数の差を表します。「ADD」は、「アディション」と読みます。
加入度数はプラス(+)で表示され、度数は老眼が進行するとともに大きくなっていきます。
コンタクトレンズの処方箋やパッケージには、度数以外にも重要な記号・数値が数多く記載されているので、しっかりと意味を理解しておきましょう。
・BC(ベースカーブ)
BCは、コンタクトレンズのカーブの強さを示す数値です。装用感に影響する大切な数値で、数値が小さいほどカーブがきつくなり、大きいほどカーブがゆるやかになります。
・DIA(レンズ直径)
DIAはレンズの直径を表す数値です。DIAは、「ダイアメーター」あるいは「ダイアミター」と読みます。
視力矯正用のコンタクトレンズは、タイプごとにほぼDIAが決まっています。ソフトコンタクトレンズは13.0~14.5、ハードコンタクトレンズは9.0程度が主流です。
・AXIS/AXS/AX(乱視軸、円柱軸、中心軸)
AXISは、乱視の角度(角膜の歪み具合)を示す数値です。乱視用のコンタクトレンズを選ぶときに必要となる値で、「乱視軸」「円柱軸」「中心軸」とも呼ばれます。AXISの読み方は「アクシス」です。
・EXP(使用期限)
EXPは「Expiration Date」の略したものであり、「使用期限」を意味します。コンタクトレンズの場合、使用期限とは未開封の状態でレンズの安全性や性能などが保証される期限のことです。
EXPは処方箋には記載されませんが、コンタクトレンズのパッケージには必ず記載があります。
ここからは、コンタクトレンズの度数に関連して、コンタクトレンズユーザーが知っておくべきこと、注意すべきことをいくつか紹介します。
「度数」はコンタクトレンズやメガネのレンズに対して使う用語で、視力を矯正する力を数値で表したものです。そして「コンタクトレンズの度数」とは、コンタクトレンズの屈折する方向や屈折力を意味します。
一方で「視力」は視覚に対して使う用語で、目で見た対象物の存在・形状をどの程度識別できるかを数値で表したものです。
つまり、「度数=レンズの矯正力」、「視力=目で物を識別する能力」となるため、両者はまったく異なるものといえます。したがって、コンタクトレンズの度数から視力を知ることや、視力から度数を知ることはできません。
なお、視力が同じでも適正な度数が同じとは限りません。なぜなら、目の構造や状態には個人差があり、見え方にも微妙な差があるからです。
度数はレンズの矯正力を表すものですが、メガネの度数とコンタクトレンズの度数が一致するとは限りません。その理由は、メガネとコンタクトレンズでは、目からレンズまでの距離が異なるからです。
コンタクトレンズは直接目に装用するため、目とレンズの間の距離はごくわずかです。対して、メガネのレンズは目から約12mm離れた位置にあるため、同じ度数だと見え方が変わることがあります。
見え方の差は近視・遠視・乱視の程度に比例して大きくなり、近視の場合はメガネの度数よりコンタクトレンズの度数のほうが弱くなるのが一般的です。
なお、近視・遠視・乱視の程度が弱い場合は、メガネの度数とコンタクトレンズの度数が一致することもあります。
度数とBC(ベースカーブ)が同じでも、メーカーが異なるレンズでは装用感や見え方が変わることがあります。
実際、コンタクトレンズのメーカーを変更する際に、度数変更が必要となるケースはけっしてめずらしくありません。これは、各メーカーでレンズのデザインや使用している素材などが異なるためです。
このようなことから、度数だけを頼りに今までと違うメーカーのコンタクトレンズを購入するのは避けるべきでしょう。
コンタクトレンズを購入する際に必要な度数は、近視・遠視用、乱視用、遠近両用で少しずつ異なります。ここでは、レンズの種類ごとに確認すべき項目をまとめました。
・近視・遠視用コンタクトレンズ
度数(POWER/PWR/P/D/SPH/S)だけでなく、BC(ベースカーブ)とDIA(レンズ直径)の確認が必要です。度数は、近視がマイナス(-)、遠視がプラス(+)で表示されます。
・乱視用コンタクトレンズ
度数(POWER/PWR/P/D/SPH/S)、BC(ベースカーブ)とDIA(レンズ直径)に加え、乱視度数(CYL/CY/C)、乱視軸(AXIS/AXS/AX)の確認が必要です。
・遠近両用コンタクトレンズ
度数(POWER/PWR/P/D/SPH/S)、BC(ベースカーブ)とDIA(レンズ直径)、さらに加入度数(ADD)の確認が必要です。
コンタクトレンズの度数を上げるには、レンズを厚くしなければなりません。しかし、厚すぎるレンズは装用に向かないため、度数に合わせてレンズを際限なく厚くすることは不可能です。
このような事情があるため、コンタクトレンズの度数には限界があります。
なお、コンタクトレンズの度数の範囲はメーカーやレンズの種類によって異なります。レンズの種類を変えることで目に合う度数が見つかることもあるので、見づらさがある場合は眼科医に相談しましょう。
現在使っているコンタクトレンズの度数などがわかっている場合でも、「メーカーの違うレンズを使いたい」「ハードコンタクトレンズをやめてソフトコンタクトレンズにしたい」といった希望がある場合は、眼科を受診して処方箋を発行してもらいましょう。
眼科で検査・診察を受けることで、正しい度数を把握できます。診察後に目に合うレンズを処方してもらえば、度数が合わなくてコンタクトレンズを買い直すリスクを減らせるため、コスト削減につながるでしょう。
また、定期的に眼科を受診すれば、目の状態を診察してもらえるだけではなく、度数の変更にも対応してもらえるため、合わないレンズを使い続けるリスクもありません。
正確な度数や適切な視力矯正方法は、年齢や生活背景などで変わるものです。現在使用しているコンタクトレンズの度数がわかっていても、定期的に眼科を受診するようにしましょう。
コンタクトレンズの度数には、近視・遠視度数のほか、乱視度数、加入度数などさまざまな種類があります。また度数だけでなく、BCやDIA、乱視軸などの数値の意味や役割を知っておくことも大切です。
しかし、度数などの数値は眼科を受診しなければ知ることができません。たとえ正確なレンズデータを把握していても、目に合うコンタクトレンズを自己判断で選ぶのは困難です。
瞳の健康を維持するためにも、定期的に眼科を受診して目に合うコンタクトレンズを処方してもらいましょう。
更新日:2024/11/10