コンタクトレンズ装用時に、目の乾燥や疲れを感じることはないでしょうか。もしかすると、それはドライアイのせいかもしれません。
ドライアイは、生活習慣や目を使う環境などの影響で悪化するとされており、コンタクトレンズの装用もドライアイを悪化させる要因の一つです。しかし、最近はドライアイになりにくいコンタクトレンズや、コンタクトレンズ装用時の目の乾きをやわらげる目薬・装着液も多数販売されています。
そこでこの記事では、ドライアイの症状や原因、予防法のほか、ドライアイになりにくいコンタクトレンズの選び方などを解説します。簡単にできるドライアイのセルフチェックリストも紹介するので、コンタクトレンズ装用にともなう目の乾燥にお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
まず、ドライアイがどのような病気なのかを知っておきましょう。
ドライアイは、単に「乾き目」を指すわけではありません。
ドライアイはおおむね、以下のように定義されます。
ドライアイは、様々な要因により涙液層の安定性が低下する疾患であり、眼不快感や視機能異常を生じるほか、眼表面の障害を伴うことがある。
つまり、ドライアイは涙の安定性が低下して、目の表面にとどまる力が弱くなり、さまざまな症状が生じる「涙の病気」といえます。体質的な要素に加え、エアコンやパソコン、スマートフォンの普及、コンタクトレンズの装用もドライアイを悪化させる要因となります。
日本国内で行なわれたある調査によると、40歳以上の方の2割近くがドライアイだったというデータもあります。また、オフィスで働く方を対象にした調査では、6割以上がドライアイ、もしくはドライアイの疑いあり、と診断されています。
ドライアイには、涙の分泌量に問題がある「量的な異常」と、涙の性質や涙を保持する能力に問題がある「質的な異常」の2種類があります。
「量的な異常」は涙の分泌量に問題があるタイプで、涙の分泌がそもそも少ない状態のことを指します。
「質的な異常」は涙の成分に何らかの問題があるタイプで、涙が目の表面に長くとどまらず、短時間で乾いてしまう状態を指します。
両者のうち圧倒的に多いのは「質的な異常」で、その割合はドライアイ患者の約8割を占めるとの報告もあります。
そして、患者数の多い「質的な異常」で近年問題となっているのが、「BUT(涙液層破壊時間)短縮型ドライアイ」です。
BUT短縮型ドライアイの方は、涙の分泌量に異常はないものの、目の表面に涙がとどまらず、5秒以内に涙が乾いてしまいます。このタイプのドライアイは、パソコンなどを使う機会が多い方や、コンタクトレンズを常用する方に多いようです。
ドライアイになると、目の乾きだけではなく、ゴロゴロ感がある、目を開けにくい、目が疲れやすいといった症状があらわれることがあります。また、見えづらさを感じる場合も少なくありません。
ドライアイ研究会によると、以下のチェック項目に5つ以上当てはまる場合には、ドライアイの疑いがあるとのことです。
目が疲れる
目が重たい感じがする
目がゴロゴロする
目が乾いた感じがする
目に不快感がある
目がヒリヒリ痛い
目が赤くなりやすい
目がかゆい
朝、目が開けにくい
光をまぶしく感じやすい
白っぽい目ヤニがでる
なんとなく見えづらい
時々かすんで見える
最近少し視力が低下したようだ
引用:ドライアイ研究会「ドライアイの症状のチェック」
もっとも、これらの症状は別の病気でも生じうるものです。
また、視力検査で特に問題がない場合でも、ドライアイの影響で視力が変化しやすくなります。そのため、眼科で測定した視力が1.0以上でも、日常生活における視力が低下しているケースも少なくありません。
チェック項目に当てはまる症状が5つ以下でも、気になる症状がある場合は早めに眼科を受診して、医師の診察を受けることをおすすめします。
一般的に、ドライアイの発症は年齢による変化や生活環境の影響が大きいとされています。また、ストレス、病気、薬の副作用、夜型生活をはじめとした不規則な生活などが、ドライアイの原因になることもあるようです。
このようなさまざまな要因のうち、特にドライアイに悪影響をおよぼすとされているのが、パソコンなどの長時間使用、空気の乾燥、コンタクトレンズの使用などです。
パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器の画面を見続けると、まばたきの回数が減って目が乾きやすくなります。また、デジタル機器を長時間使用すると交感神経が興奮状態となって、涙の量が減ることもあるようです。
低温・低湿度の環境下では涙が蒸発しやすくなるため、ドライアイが悪化しやすくなります。特に冬場は気温が低く湿度が低いため、注意しなければなりません。
夏場でも、エアコンの効いている室内で長時間過ごしたり、直接風に当たったりすると、ドライアイが悪化しやすくなります。
コンタクトレンズを使用すると、涙の層がレンズの表側と裏側で分断されてしまいます。涙の層が薄くなると涙液の安定性が損なわれるため、ドライアイの悪化をまねくと考えられています。
ここで、ドライアイとコンタクトレンズがどのように関係しているか、もう少し詳しく解説します。
コンタクトレンズを装用すると、涙の層がレンズの表側と裏側で分けられてしまうことはすでに述べたとおりです。涙の層が薄くなると涙の状態が不安定になり、同時に涙が蒸発しやすくなるため、ドライアイの悪化をまねきやすいと考えられています。
また、ソフトコンタクトレンズの場合は、長時間の装用にともなうレンズの乾燥の影響も無視できません。ソフトコンタクトレンズは水分を多く含むため、装用感は良いですが、レンズが乾燥してくると水分量を維持するために涙を吸収してしまい、目が乾燥しやすくなるのです。
さらに、コンタクトレンズに汚れが付着していると涙が広がりにくくなるため、ドライアイを悪化させるおそれがあります。
これらのことから、コンタクトレンズを使用する際には、ドライアイの発症・悪化に注意しなければなりません。
それでは、ドライアイを予防するにはどうすればよいのでしょうか。予防のためのポイントとしては、目を酷使しないこと、涙が蒸発しやすい環境を作らないこと、目の潤いを保つことの3つが挙げられます。
パソコンやスマートフォンなどを長時間連続で使用すると、目に負担がかかり涙の分泌量が減るおそれがあります。できれば1時間に1回は休憩して、目を酷使しないようにしましょう。
モニター画面の明るさや文字の大きさを変更して、目が疲れないようにするのも良い方法です。さらに、モニター画面を目線より下の位置に置くと、目を大きく開かなくて済むため乾燥予防になります。
コンタクトレンズを使用している場合は装用時間を短くするなどして、目を休ませるようにしてください。
また、目が疲れたときは、蒸しタオルをまぶたの上にのせて休憩することをおすすめします。休憩時間は5分ほどで十分です。蒸しタオルの代わりに、市販されているホットアイマスクを使用するのもよいでしょう。
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空気が乾燥していると涙が蒸発しやすくなるため、エアコンを使用する際は、加湿器を使うなどして室内の湿度を保ちましょう。加湿器がない場合は、濡れタオルなどを室内に置いておくのもおすすめです。
なお、エアコンや扇風機を使っている場合は、目に直接風を当てないようにして乾燥を防いでください。
ドライアイを予防するには、目の潤いを保つ工夫も必要です。まばたきの回数を意識して増やしたり、必要に応じて目薬を使ったりして、目の乾きを防ぎましょう。
目は眠っている間に乾燥が進むため、目薬を使うなら起床時や寝る前がおすすめです。目の疲れがたまりやすい午後から夕方にかけての時間帯も、目の乾きを感じたら目薬を使うようにしてください。
ただし、目薬を使い過ぎてしまうと、涙の油膜層が破壊されて目に傷が付くことがあります。使用時には用法用量を守って、使い過ぎないようにしましょう。
コンタクトレンズを使用している場合は、目が乾きにくいタイプのコンタクトレンズを選ぶようにしましょう。コンタクトレンズの使用時間を短くして、メガネを併用するのもおすすめです。
最近は、ドライアイに配慮した製品も多数販売されています。眼科を受診すれば目の状態に応じたコンタクトレンズを処方してもらえるので、気になる症状がある場合は医師に相談することをおすすめします。
ここからは、ドライアイに悩む方に向けて、コンタクトレンズ選びのポイントを紹介します。
ドライアイに悩む方は、目が乾燥しにくいハードコンタクトレンズを選択するのがおすすめです。
ハードコンタクトレンズは水分を含まない素材で作られており、レンズから水分が蒸発したり涙がレンズに吸収されたりしません。そのため、ソフトコンタクトレンズよりも目の乾燥感は少なめです。
ハードコンタクトレンズが苦手で、ソフトコンタクトレンズの使用を希望する場合は、含水率(がんすいりつ)の低いレンズを選ぶようにしましょう。
含水率とは、コンタクトレンズに含まれる水分量の値のことです。含水率が高いと蒸発する水分量が多くなるため、より多くの涙がレンズに吸収されて目の乾燥をまねきます。一方、含水率が低いと蒸発する水分量は少なく、涙もあまり奪われません。
したがって、目の乾燥が気になる場合は、ハードコンタクトレンズか含水率50%未満の低含水レンズを選ぶようにしましょう。
コンタクトレンズの表面がなめらかな商品を選ぶことも大切です。
コンタクトレンズの表面がなめらかでないと、装用時に摩擦が起きて目に負担がかかるため、ドライアイが悪化しかねません。一方、レンズの表面がなめらかであれば摩擦が起きにくく、目にかかる負担を軽減できます。
レンズ表面がなめらかなものは着け心地が良いため、迷ったら装用感にこだわって開発されたレンズを選ぶようにしましょう。
目に供給される酸素の量が少なくなると、角膜の代謝が低下して目に障害が起きやすくなります。ドライアイが気になる場合は、酸素透過率が高いレンズを選ぶようにしましょう。
特におすすめなのが、シリコーンハイドロゲル素材のコンタクトレンズです。シリコーンハイドロゲル素材のレンズは、酸素透過率が高く含水率が低いため、目の負担を抑えながら乾燥も防げます。
コンタクトレンズの表面が汚れていると、涙がうまく広がらなくなるためドライアイをまねきやすくなります。そのため、ドライアイのリスクを減らすには、汚れの付きにくい素材のレンズを選ぶことも大切です。
たんぱく質汚れが気になる場合は、非イオン性のレンズを選ぶとよいでしょう。メイクする頻度が高い方には、皮脂汚れに強い両性イオン素材のレンズがおすすめです。シリコーンハイドロゲル素材のレンズも、汚れが付きにくい特長があります。
また、レンズケアが十分にできない場合は、使い捨てのワンデータイプを選ぶとよいでしょう。
ドライアイ対策として、コンタクトレンズ用の目薬や装着液を使って、目の潤いを保つのも良い方法です。
装着液は、コンタクトレンズを装用する際に適量をレンズに滴下します。レンズが潤うため装用感が良くなり、装用中の目の乾燥予防にも役立ちます。
コンタクトレンズ用の目薬は、レンズを装用している際に使います。おもに目に潤いを与える目的で使用しますが、装着液と異なり1日数回使用可能です。潤い不足を感じる場合は、目薬と装着液を併用しても構いません。
なお、目薬・装着液を購入する際は、使用しているコンタクトレンズに対応しているかどうかを必ず確認してください。ハードコンタクトレンズのみに使えるもの、カラコン(カラーコンタクトレンズ)には使えないものなどもあるため、十分に注意しましょう。
ドライアイは、目が乾くだけではなく、目の不快感や違和感、視力低下などをともなうこともある涙の病気です。ドライアイの原因にはさまざまなものがありますが、コンタクトレンズの使用で症状が悪化する場合も少なくありません。したがって、ドライアイが気になる場合は、目の潤いを保ちやすいコンタクトレンズを選ぶようにしましょう。
ドライアイに優しいコンタクトレンズ選びのポイントは、含水率の低さ、レンズ表面のなめらかさ、酸素透過率の高さ、汚れの付きにくさなどです。定期的に眼科を受診して、目の状態に合ったコンタクトレンズを処方してもらいましょう。目の乾きが気になる場合は、コンタクトレンズ用の目薬や装着液を使用するのもおすすめです。
なお、ドライアイの症状がひどい場合は、早めに眼科を受診してください。目の健康を維持するために、適切な治療を受けて症状の悪化を防ぎましょう。