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遠近両用コンタクトレンズと運転、安全な運転のための注意点

遠くも近くもほどよく見える遠近両用コンタクトレンズは、日常生活だけでなく自動車の運転時にも役立つ便利なアイテムです。
ただし、遠近両用コンタクトレンズは見え方に「クセ」があるため、運転時に使う場合は気を付けなければならないことがいくつかあります。

そこで本記事では、遠近両用コンタクトレンズの仕組みや見え方の特徴、運転時に使用するメリットや注意点などを解説します。遠近両用コンタクトレンズの使用に不安があれば、ぜひ参考にしてください。

■遠近両用コンタクトレンズとは?

遠近両用コンタクトレンズとは、その名のとおり遠くにも近くにも焦点が合うように作られているコンタクトレンズです。では、なぜ1枚のレンズで遠くも近くも見えるようになるのでしょうか。その仕組みを見ていきましょう。

◇遠近両用コンタクトレンズの仕組み

近視などの矯正に使われる一般的なコンタクトレンズ(単焦点コンタクトレンズ)は、度数が1種類しか入っていません。

これに対して遠近両用コンタクトレンズは、1枚のレンズに遠くを見るための度数と近くを見るための度数がバランス良く配置されています。そのため、遠くの物にも近くの物にもピントを合わせることが可能です。

ただし、遠近両用コンタクトレンズにはいくつかの種類があり、度数の配置も商品によって異なります。

◇遠近両用コンタクトレンズの種類

遠近両用コンタクトレンズは、「素材」と「ピントの合わせ方」、「レンズの構造」によってそれぞれ2つのタイプに分けられます。

・ハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズ
遠近両用コンタクトレンズには、ハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズの2種類があります。

ハードコンタクトレンズは硬いプラスチック素材で作られているレンズで、大きさは角膜(黒目の部分)よりも少し小さめです。
光学性にすぐれ矯正力が高いことから、老眼が進んでいる方や乱視が強い方、細かい文字まではっきり見たい方に向いています。

ソフトコンタクトレンズは、やわらかいプラスチック素材で作られているレンズです。大きさは角膜より大きく、使い捨てタイプもあります。
装用感が良くてズレにくいため、初めてコンタクトレンズを使う方や運動をする方におすすめです。また、度数の弱い初期の老眼にも向いています。

・交代視タイプと同時視タイプ
遠近両用コンタクトレンズのピントの合わせ方には、「交代視タイプ」と「同時視タイプ」の2種類があります。

交代視タイプは、視線を変えてレンズに配置された遠用の度数と近用の度数を使い分けるタイプです。慣れるまでに少し時間がかかりますが、遠くでも近くでも物をクリアに見ることができます。ハードコンタクトレンズは、ほとんどが交代視タイプです。

同時視タイプは、視線の位置を変えずにピントを合わせられるタイプです。慣れるのに時間はかかりませんが、交代視タイプに比べて見え方は劣ります。ソフトコンタクトレンズは、すべて同時視タイプです。

・バイフォーカルとマルチフォーカル
レンズの構造で見ると、「バイフォーカル」と「マルチフォーカル」の2種類があります。

バイフォーカルは、遠用と近用の度数が分かれているタイプです。度数の配置は商品により異なりますが、見え方のゆがみやブレはあまりありません。

マルチフォーカルは、遠用と近用の度数の境目がないのが特徴です。鮮明さはバイフォーカルほどではありませんが、レンズ上の度数が徐々に変化していくタイプで、中間距離の物にもピントを合わせやすくなります。なお、マルチフォーカルも商品ごとに度数の配置が異なります。

■遠近両用コンタクトレンズの見え方の特徴

遠近両用コンタクトレンズは1枚のレンズに複数の度数が配置されているため、単焦点レンズとは物の見え方が異なります。特に知っておくべき特徴は、以下の4点です。

◇近くも遠くもほどよく見える

遠近両用コンタクトレンズは、近くにも遠くにもピントが合うように作られています。

したがって、単焦点レンズのように「遠くは見えるけれど、近くが見づらい」ということがなく、老眼鏡のようにかけ外しの手間もありません。もちろん、裸眼のときより物をきちんと見ることができます。

このように、遠近両用コンタクトレンズを使うと近くも遠くもほどよく見えるようになるため、不安なく自動車を運転できます。

◇商品によって見え方が多少変わる

遠近両用コンタクトレンズは、商品によって度数の配置が異なります。そのため、近視の度数や加入度数(遠用の度数と近用の度数の差)が同じ商品でも、見え方が変わることが少なくありません。

もっとも、商品によって見え方が変わるのはメリットでもあります。なぜなら、見え方に不満がある場合は、商品を変えるだけで見え方が良くなることもあるからです。

◇単焦点レンズに比べて遠くの見え方が劣る場合がある

遠近両用コンタクトレンズには複数の度数が配置されているため、装用すれば遠くも近くもそれなりに見えるようになります。
ただし、遠くの見え方は単焦点レンズで見る場合に比べて「鮮明さに欠ける」と感じる方もいるようです。

なお、この見え方も商品を変えると改善される可能性があります。したがって、見づらさを感じる場合は複数の商品を試してみるとよいでしょう。

◇暗い場所では遠くが見えにくいこともある

暗いところでは、より多くの光を摂り入れるために瞳孔が大きくなります。
しかし、遠近両用コンタクトレンズを使っているときに瞳孔が大きくなると、遠用の度数と近用の度数が同時に視界に入ることになるため、遠くが見えにくくなることがあります。
また、暗いところでは視界が全体的にぼやけたり光がにじんだりすることもあるため、より一層見づらさを感じるかもしれません。

ただし、この弊害については、夜間だけ遠近両用メガネを使用することで解決できます。

■遠近両用コンタクトレンズを運転時に使うメリット

遠近両用コンタクトレンズを使うと、さまざまな場面で自動車の運転が快適になります。

◇道路標識からカーナビまできちんと見える

自動車を安全に運転するためには、少し離れたところにある道路標識や信号、前方を走る車や道路を横断する歩行者との距離などを正確に把握しなければなりません。
また、バックミラーやサイドミラー、カーナビなどを見るために、近・中距離に焦点を合わせなければならない場面も多くあります。

老眼が進んだ場合、度数が1種類しか入っていない単焦点レンズやかけ外しが必要な老眼鏡では、運転時の安全性を確保するのが難しくなってきます。

このような運転時の不便さの解消に役立つのが、遠近両用コンタクトレンズです。遠近両用コンタクトレンズを装用すれば、少し遠くの道路標識から手もとのカーナビまできちんと見えるようになるため、より安全に運転できるようになります。

◇曇ったりずり落ちたりしない

「遠くにも近くにも焦点を合わせたいなら、遠近両用メガネでもいいのでは?」と思うかもしれません。しかし、遠近両用コンタクトレンズを使えば、メガネ使用時の不快感も解消できます。

例えば、メガネは外気温との温度差や呼気で曇ることがありますが、遠近両用コンタクトレンズなら曇って視界が悪くなることはありません。
また、メガネは汗などでズレることがあり、手が当たると外れることもあります。一方の遠近両用コンタクトレンズは、メガネに比べるとズレにくく、外れるリスクも高くありません。

このように、遠近両用コンタクトレンズはメガネに比べて安定した視界を確保しやすいため、運転時に不快な思いをすることが少なくなります。

■遠近両用コンタクトレンズを運転時に使う場合の注意点

大変便利な遠近両用コンタクトレンズですが、運転時に使う場合はいくつかの点に注意しなければなりません。

◇慣れるまでに時間がかかる

遠近両用コンタクトレンズは1枚のレンズに複数の度数が入っているため、見え方に慣れるまでに多少時間がかかります。

見え方に違和感がなくなるまでの期間は人それぞれですが、一般的にソフトコンタクトレンズの場合は1週間、ハードコンタクトレンズの場合は2週間ほどかかるといわれています。ただし、慣れるまでは近くも遠くも見づらくなるため、いきなり車の運転時に使うのは避けるべきでしょう。

なお、加入度数が小さいうちに遠近両用コンタクトレンズを使い始めれば、慣れるまでの期間は比較的短く済むことが多いようです。安全運転のためにも、見え方に違和感を覚えたら早めに眼科を受診して、遠近両用コンタクトレンズを処方してもらうとよいでしょう。

◇暗いところでは見え方が悪くなる

遠近両用コンタクトレンズを暗いところで使用すると、瞳孔が大きくなって複数の度数が視界に入ることになるため、視界がぼやけたり光がにじんだりすることがあります。

そのため、夜間の運転に遠近両用コンタクトレンズを使うときは十分に注意しなければなりません。同様の理由で天候不良時やトンネル通過時なども注意が必要です。
このような場面での運転が避けられない場合は無理をせず、単焦点レンズと老眼鏡の併用なども考えてみましょう。

■まとめ

遠近両用コンタクトレンズは、安全な自動車運転をサポートする有用なアイテムです。

ただし、遠近両用コンタクトレンズは見え方に特徴があるため、慣れるまでに時間がかかります。したがって、遠近両用コンタクトレンズを運転時に使いたいなら、まず日常生活で見え方に慣れることが必要です。
しかし、加入度数が小さいうちに遠近両用コンタクトレンズを使い始めれば、比較的短期間で見え方に慣れることができます。

運転時のストレスを減らすためにも、近くが見づらくなってきたら早めに眼科を受診し、遠近両用コンタクトレンズを処方してもらいましょう。